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第7話
あれから1年半と少し。
この土地にも慣れ、それなりに生活ができてきた。
お世話になっている老夫婦はとても優しく、僕を孫のように接してくれた。
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創士様の家を出た僕は、持っているお金で行けるところまで北を目指した。
東北の農村地区にたどり着いた僕はそこで行き倒れて、今お世話になっている老夫婦に助けられた。
病院に行くことを拒んだ僕を、老夫婦は何も聞かずに看病してくれ、住むところとご飯を与えてくれた。
僕がたどり着いたこの土地の人たちも皆優しく、僕が何者でも構うことなく、一員として受け入れてくれた。
だから僕は、その恩に報いるためにできる限りお手伝いをした。
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1ヶ月ほど前に今年の米の収穫も終わり、少しずつ冬の気配が近づいてきた。
「柊、晩ご飯何が食べたい?」
「あの、な――」
「『何でもいい』は一番難しいって言ったでしょ。もう。ふふっ」
「あ、ごめんなさい」
俯く僕に、お祖母さんは優しく笑った。。
お祖父さんもお祖母さんも、僕の過去について未だに聞いてこないし、出て行けとも言われない。
そんな優しさに、つい甘えてこんなに長く居着いてしまった。
でも、もうそろそろ出て行かないと。
お手伝いの度に『お駄賃』として貰ったお金がだいぶ貯まった。
このお金でもう少し北を目指そう。
そこで住み込みで働ける場所を見つけて、次に目指す場所を考えよう。
「あの、お祖母さん。僕、茶碗蒸しが食べたいです」
「じゃあ、明日の晩ご飯に作るわね。柊、手伝ってくれる?」
「はいっ」
もっともっと、遠くへ行こう……。
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