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第6話
ソファセットは二人暮らしにしては大きいものを選んだはずなのに、小さかったかと思わせるような、それくらい不穏な空気を漂わせて睨み合う理人と孫――結人。
「内容証明、もらったけど納得いかねえから説明してもらいに来た」
「そのままだ」
「だから、それがわかんねえつってんだけど?! 何だよ、生前財産分与って? そんでその他相続放棄とか、戸籍移動の証明書とか全然わけわかんねえんだよ!」
イライラと理人をにらみつけて孫が口を開く。
「いつの間にか引っ越しまでしてるし、全然、わかんねえ!」
「俺の籍を秀爾のとこに入れた。今後一切かかわらずに済むように、相続放棄もした。その証明書を送っただけだ」
今まで住んでいた家は、お前にくれてやるから、好きにするといい。
理人がそう言った瞬間にバンと音を立てて、テーブルに封書がたたきつけられる。
今朝、角田が送ったと言っていた、内容証明だろう。
「ばあちゃんが大事にしてた家だろう?! 捨てんのかよ?! そんなに昔の男に未練たらたらかよ! やけぼっくいに火がついて、大ごとだな!」
カチンときた。
いくらなんでもこれは許せない。
「訂正しなさい」
自分で思っていた以上に、冷たい声が出る。
けれど引かない。
ひるまない。
「今のは、オレや理人だけじゃなく、理人の奥さん……君のおばあさんに対しても、失礼だ」
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