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第7話
しばらくすると、係長はレボリューションさんのところに挨拶に回りたいから、と、
「じゃあ、後は若いもん同士で!」
まるでお見合いのような一言で俺の肩をポン!と叩き、俺は秀一さんと2人になった。
イケメンを間近にして、突然の沈黙。
「あ、料理、量も随分減りましたし、冷めてしまってますし、なにか頼みましょうか?中山さん、飲み物は?」
慌てた様子で秀一さんがテーブルにあるメニューを手に取った。
「んー、秀一さんに任せます。飲み物は...ハイボールで」
そう告げると、彼が俺をじっと見る。
な、なにか悪いことでも言ったかな、と狼狽えた。
「秀一、でいいですよ、中山さん」
「で、でも...」
「秀一さん、てなんか気恥ずかしいです。僕の方が年下ですし...」
確かに途端に顔を伏せた、彼の顔が若干、赤い。
「じゃ、じゃあ...秀一くん、で」
「はい!」
嬉しそうな満面な笑みに変わる。
男の俺ですらドキドキしてしまうくらいだ、女ならイチコロだろうなあ...。
「モテるでしょう?秀一くん」
「モテませんよ。あ!アボカドがある!」
メニューを見ていた秀一くんが無邪気な笑みを見せ、
「頼んでもいいですか?」
「え、あ、うん。秀一くんの好きな物、頼んでよ」
結果、秀一はアボカドのクリームチーズ和え、アボカドの春巻き、ささみの焼き鳥、梅肉、わさび味、えのきの豚肉巻きをそれぞれ二本ずつオーダーした。
「アボカドはビタミンEが豊富で疲労回復やビタミンB2も含まれていて、ストレスや生活習慣病にもいいんですよ」
「へえ...」
「豚肉はこちらも疲労回復に良くて、あと肌や髪の健康維持だったり、トリプトファンが含まれているので、睡眠の質を高める作用もあって、それに、えのきもまた、疲労回復はもちろん、ストレス軽減やカロリーも殆どないことから、ダイエットにも最適なんです」
「随分、詳しいんだね、秀一くん」
感心しながら俺はハイボールのグラスに口付けた。
「栄養士の資格を持っているので」
「へえ!だからか!でも栄養士の資格あるならそっちで仕事は考えなかったの?」
「栄養学は...学びたかっただけなんで」
秀一くんがオーダーしてくれた、アボカドの春巻きに齧りついた。
「あちっ」
中がまだかなり熱を持っていて、舌を火傷した。
「大丈夫ですか?中山さん」
秀一くんは俺に慌てて、ハイボールを渡してくれた。
「お冷、貰ってきましょうか?」
「いや、大丈夫、ありがとう、秀一くん」
ハイボールで口の中を冷やしながら、秀一くんの笑顔に笑顔を返した。
...こんなにイケメンで気が利く、優しい彼氏がいて、彼女さんは幸せだろうなあ....。
無意識に秀一くんの朗らかな笑顔に魅入っていた。
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