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第21話
島まで送ってもらった白亜はマーメイを見送り、子供を連れて家に入る。
ベッドに寝かせて様子を伺う。
顔色も良いし、呼吸も規則ただしい。
さて、何か作ろうか。
マーメイに振る舞う予定は駄目になったが、この子に振る舞えるなら良いかと、白亜は冷蔵庫の中身を今一度確かめる。
そう言えば、無くなりそうになったら補充に来てくれると言っていたっけ、あの無性に腹が立つ胸くそ悪い男。漆黒だったか。
やっぱり名前も正反対であるし、磁石のN極とS極の様なものだろうか。
よく解らない胸くそ悪さに、白亜もなんだかもモヤモヤしてしまう。
人を好きになる事もさらさら無いが、ここまで意味も無く人を嫌うと言うの無い事だ。
だから気になってしまうのだ。
あとやたら顔が怖いし……
あの子が泣かないとと良いけど。
白亜はそんな事を感じながら料理を作るのだった。
白亜を送り届けたマーメイは、自分で送っておいて寂しくなってしまう。
今日は泊まって行くと思っていたから空になってしまった空気の部屋が無性に寂しい。
でも、仕方ない。
折角、休みをもぎ取ったのに、自分が迎えに行く前に、変な蛸に襲われているし、子供とキスしてるし、あれは人工呼吸なのだけど、何かモヤモヤする。
私ともキスして欲しかったなぁ……
マーメイは溜め息を漏らしてしまう。
それにしても、ハクは何か言いたそうだったけど、何だっのだろう。
聞けば良かったのだが、何だか聞きたく無くて、半ば話を遮って家に送り届けてしまったけど……
「マーメイ様、漆黒殿からお手紙ですぞ」
コンコンと部屋をノックしてから入って来たのは家来の亀である。
「そう、有難う」
「以前の手紙もちゃんと読んでくだされたのかと漆黒殿は心配しておられた。何か急ぎの用なのでは?」
「うーん、手紙、何処やったかなぁ」
「ヤレヤレそんな事だろうと思いましてな、亀が探しておきましたぞ」
「助かるよ」
亀の甲羅をご褒美に撫でてやる。
亀は嬉しそうにしつつ、マーメイに手紙を渡して部屋を出ていった。
やっぱり手紙が来ていたのを確認し忘れていた様だ。
マーメイは封を切って手紙の内容を確かめる。
『取り急ぎ確認したい事があります。先日の嵐の晩、白の国の海域で溺れた貴族を助けたを記憶は有りませんか? 白の王国の王なのですが、間抜けにも弟に謀反を起こされ荒れ狂う海に突き落とされたそうなんですが…… 容姿は白髪に水色の瞳で、見た目だけは好青年です』
先日の嵐の夜、白の国の海域、貴族、白髪で水色の瞳……
ハク?
あの嵐の夜に拾ったのはハクだけである。この所海を荒れさせてはいるが、漆黒が見ればマーメイがしている現象であると気付いている筈だ。この荒れを嵐とは表現しないだろう。そうなると、漆黒の言う嵐の夜はあの晩だけ。ハクを拾った時、確かに品の良い上等な服を着ていた。
文末の見た目だけは好青年の所だけは引っかかるが、白髪に水色の瞳等、そうそう有る容姿では無い。
そうなると、ハクは白の国の王様……
そうか、だからさっきあんなに泣いたり怒ったりしていたのか。
そして自分が白の国の王だから国に帰してくれと言いかけたのだ。
『手紙を読んで頂けたなら返事を早急に、白亜の弟は今にも死刑にされそうです。彼は弟を可愛がっていたので、そうなれば酷く悲しむはず、国も混乱し、治安の悪化も酷い有様です。白亜に直ぐ戻るようにとお伝え下さい。で、無ければ無理にでも私が連れ去ってしまいますよ』
二枚目の内容は既に切羽詰まっていた。
どうやらハクの本当の名前は白亜であり、漆黒はハク=白亜だと確信している様だ。
マーメイはその手紙を握り、すぐさま白亜の元へ向うのであった。
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