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第22話

 白亜が料理を作っていると、ちょんちょんと服の裾を引っ張られ振り向く。  男の子と目が合った。 「気がついたんだね。今、ご飯を作っているんだ。少し待っててよ。お腹空いてるでしょ? あ、何か嫌いな食べ物とかあるかな?」  白亜は一旦火を止めて男の子と向き合う。  男の子はボーッと白亜を見つめていた。 「えっと、そうだ名前を教えて欲しいな。君を何て呼べば良いのか解らないと困るよね。僕の事は解るかな?」  しゃがんで男の子と視線を合わせてみる。  人見知りする子なのだろうか。  それとも海に落とされた恐怖で記憶を失くしてしまっているとか?  もしかして怯えられているのだろうか。  男の子は何も言ってくれない。  困ったな。 「うーと、自己紹介はご飯をたべながらにしようか。腹が空いては戦は出来ないからね〜」  白亜は男の子の手を引くとソファーに座らせる。  取り敢えず顔色も悪く無いし、大丈夫そうではある。  5歳ぐらいの子供って何をするんだろう。ご飯は僕と同じ物を食べられるよね?  味付けを薄くしておこうかな。  自分が5歳ぐらいの頃は、もう王になるための勉強をさせられていたが、裏柳とはお絵描きをして遊んだりした気がする。  お絵描きするかな?  紙とペンは……  白亜は引き出しを探ってみる。  何か書くことも無い為、気にして見なかったが、日用品であるし、あの漆黒と言う男が普通の感覚を持っているならば用意してあるだろう。少なくともメモ帳ぐらいは有るはずだ。 「あ、あった」  腹が立つぐらい気が回る奴らしい。  メモ帳は勿論、便箋に、ノート、画用紙まで揃え、ペンに筆、色鉛筆から絵の具まである。 「お絵描きして待ってるかな?」  白亜は取り敢えず全部テーブルに並べた。  男の子は白亜と画用紙や色鉛筆を交互に見る。 「じゃあ、僕はご飯を作ってくるね。お風呂とかも後で入ろうね」  白亜はそう言うと笑顔を見せ、キッチンに戻る。  男の子がお絵描きで遊んでくれるかどうか解らないが、取り敢えず料理をして何か食べさせた方が良いだろう。

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