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第33話
朽葉は孤児だったからか、やたら大人びていてまだ5歳とは思えないくらいであった。
物静かで気配を消すのが上手く、気づくと行方不明である。
行方不明と言っても、部屋の端で本を読んでたりするだけなのだが。
黒柳も頭が良く、大人びているので、裏柳はもしかして5歳ってこんな感じだったかななんて思ってしまう程だ。
朽葉の面倒も黒柳が見てくれてた。
面倒と言っても遊び相手をしてあげるぐらいで、どちらかと言えば黒柳の面倒を朽葉が見てくれていると言ったほうが正しいかもしれない。
朽葉は耳が聞こえないと言うのも有るが、物静かで基本的には本を読んだり文字を書いたり勉強するのが好きな様だ。黒柳も勉強が嫌いな訳では無く、よく朽葉に物事を教えているが、暫くすると朽葉を連れて外に出て行き魚を釣ったり四葉のクローバーを探して遊んだりしている。
朽葉は手先が器用なようで、シロツメグサで王冠を作って黒柳に被せていた。
黒柳は凄く喜んで一日中自慢していたっけ。
そんな所はやっぱりまだ子供っぽかったりして、裏柳も和む。
最近では白の国も落ち着き、活気を取り戻していた。
治安も良くなり、市場の物価も平常時と同じ程になった。
次の収穫時期は平年通りの収穫が見込めるだろうと、今から収穫祭の準備をしていたぐらいである。
白亜も少しは落ち着いたのでは無いだろうかと、裏柳が朽葉に手紙を書いたらどうかと進言した事が始まりである。
朽葉も言わないが、白亜を心配している様子で、いつも城の有る方を見ては手を合わせていた。
白亜の無事を祈っているのだろうと、裏柳も思っていたのだ。
朽葉も表情を明るくし、頷くと直ぐに手紙をしたためた。
裏柳が調教した伝書鳩は優秀である。
直ぐ届けてくれるだろう。
「返事が楽しみだね」
そう、裏柳は朽葉の頭を撫でる。
内容は見たりしなかったが、自分の事を書いたとしてと問題は無いだろうと思った。
白亜は朽葉を養子にしようと考えている様であるし、黒柳は朽葉を気に入っている。自分と白亜とて幼馴染み、家族ぐるみの付き合いが出来たら良いなぁ。なんて、高望みだろうか。
まさか手紙の内容のせいで、白亜が怒って追跡してくるなどと、裏柳どころか書いた本人の朽葉にも予想出来ずにいたのだ。
なんせ朽葉も本当に白亜を心配し、王として頑張って欲しい、自分の心配をして仕事に支障が出ては大変だと思っただけなのだ。いやに大人びたせいで、素直に会いたいですなんて書けなかったのである。
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