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2.シトラス side陽仁
ふぅー、と湯船に腰を下ろす。
昨日の夜は、泣いても許してくれない男だった。
腰がやけに痛い。
オレンジがかった湯をすくい上げると、手からこぼれていく。
俺じゃ何も掴めないということを自覚する。
昨日の男も結局朝まではいてくれなかった。
腕、赤くなってる。
昨日絞められた手首が真っ赤になっている。
いつまでもこんなことを続けるわけにはいかないと自分でもわかっている。
だけど。
だけど、芳宗を埋める何かがないと俺は生きていけない。
自分の失態で彼を失った。
自分のせいだとわかっているが、それが自分の心を蝕んでいることもわかっている。
「芳宗。俺は貴方に会いたいです。」
真っ白な天井。
シトラスの香りだけが俺を包み込んでいた。
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