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第17章㉔
本土上空におけるP51との初交戦から五日後ーー。
調布飛行場内の一角で、戦死者たちの隊葬が執り行われた。
黒木以下、飛行場内にいる「はなどり」、「らいちょう」、「べにひわ」の搭乗員たちと、それから整備兵の全員が参列した。
長机を並べ、白い布をかけて祭壇が拵えられた。そこに、真新しい位牌が三つ並んでいる。
その一つは、笠倉孝曹長のものだった。
笠倉と彼の乗機が発見されたと、戦隊本部に連絡が入ったのは、戦闘の翌日のことだった。
遺体を引き取り、そして原型を保ったまま多摩川に残された「飛燕」の状態を確認するため、はなどり隊から金本と松岡に加え、千葉登志男軍曹ら二名の整備兵が、西多摩郡の山村へ向かった。
村の近くまで来た時、最初に金本の目に止まったのは、山の木々の間から顔をのぞかせる鳥居だった。おそらく山頂に神社か何かがあるのだろう。六人が乗り込んだトラックは、苔むした石柱のそばを通り、村内に入った。
そこは、三十軒ほどの家からなる小さな集落だった。
亡骸はすでに、発見した村人たちの手で、村内でもっとも大きな農家に運び込まれていた。扱いは丁寧だった。囲炉裏のそばに寝かせられた笠倉の頭には白布がかけられ、枕元には線香がともされ、造りものの花まで供えられていた。
枕元で手を合わせた後、金本は松岡や千葉たちに手伝ってもらって、遺体をトラックの荷台まで運んだ。
その間に、もう一台、別の車が金本たちも通った山道を登ってきた。
金本たちのトラックはちょうど、道をふさぐ形で停車していた。その後ろに、くだんの車が停まる。
ドアが開いて、降りてきたのは三人ほどの兵士たちだった。全員、腕に「憲兵」の腕章をつけている。彼らは苛立ちもあらわに、金本たちの方へ近づいてきた。
「貴様たち邪魔だ! とっとと車をどかせろ…ーーおい。荷台に乗せているそれは、死体か? 貴様ら、どこの所属だ?」
横柄な言い草に、金本は腹を立てた。しかし、憲兵の腕章を見て、反射的に黙り込む。
沈黙する金本に代わって、口を開いてくれたのは松岡だった。
日頃、あまり出しゃばらない男だが、この時は珍しく険のある顔つきで前に出た。
「我々は調布飛行場の者だ。昨日の戦闘で散華された笠倉孝曹長の亡骸を、引き取りにきたところだ。曹長どのの霊前だ。相応の礼儀を示したらどうだ?」
その言葉に、憲兵たちは顔を見合わせた。
だがすぐに、一人がトラックへ向けて敬礼すると、他の二人もそれに倣った。
「…そういう事情だとは知らず、失礼した」
腕を下ろした後、彼らは目に見えて態度を軟化させた。金本たちに向かって、進んで自分たちの来訪の理由を明かした。
「我々は、こちらの村で米兵が見つかったと通報を受けて来たのだ――」
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