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第2話

 頭がガンガン痛む。昨日飲み過ぎたかなぁ……と、ぼんやり考えながら体を起こした。  まず、いつもの自分の部屋でないこと。次に、目の前でストレッチをしている大好きな幼馴染の小焼。最後に、昨夜の自分の発言を思い出して、三つの意味で胸が苦しくなった。 「おはようございます」 「お、おう。おはよ……」  普段と変わらない態度だから、昨夜のおれの告白は忘れてるか? それならそれで良い。このまま幼馴染の親友のままで側にいられる。このゆるい関係が無くならなくて良い。  小焼の側にいられるだけで幸せな気分になれっし、小焼の夢を叶える手伝いができたら良い。 「缶チューハイだけで泥酔するって、ある意味才能ですね。天才ですね、夏樹」  目覚めて挨拶の後の一発目がこれ。小焼は何も考えずに言っているはずだから、嫌味ではなく、ただの素直な意見。素直過ぎるのが玉に瑕なんだよな……。  窓から差し込む朝日で小焼の金髪がキラキラ光って綺麗だ。太陽みてぇだし、お星様みてぇだなぁっていつも思う。ピアスも光って見えた。  おれが施術したピアスホールも、これで何個だっけ? 片耳だけで七個はあいてんじゃねぇかな。  プールでの練習時には律儀に取っていて、愛おしくなるし、真面目な性格なのがよくわかる。ホールの消毒もきっちりしていて、サボる姿を見たことがない。少しぐらいやらなくていっかなぁとか思う時とかねぇのかな……。 「私は日課のジョギングをしてくるんで、夏樹はまだ寝ててください。何か作れるなら作ってても良いですけど」 「どうせ、『まずいメシは嫌だ』って言うんだろ?」 「好き好んでまずいものを食べようと思いませんよ。行ってきます」  と、言い残して小焼は出て行った。  朝メシは、作らないでおこう。小焼の家のものを勝手に触るのも悪い。なにより、まずいものしか作れる自信がない!  前に泊まった時におれが料理したら、「食べ物を粗末にするな」とか「全農家に謝れ」とか言われた。かなりまずいものだったけど、小焼は「勿体無いから」と言って全部食べてくれた。おれの分まで。  昨夜のことは何にも言ってなかったから、やっぱり覚えてないんだよな? 後で聞くべきか? いや、それで詰め寄られたら、困る。  ベッドに寝転ぶ。小焼の香りがする。あったかくて、良い匂いだ。腰がゾワゾワする。体の中心に熱が集まってくる。勃っちまったや。布団にもぐる。小焼の香りがいっぱいで、頭がふわふわする。二日酔いの痛みがとぶくらいには、熱い。そうっ、と下半身に手を伸ばす。  小焼はジョギングに出たばかりだから、しばらく帰ってこないはずだ。  だから、だから――……。 「はっ……ぁっ……小焼……」  下着とズボンをずらして、すっかり完全体になった自身を扱く。いつもより興奮してるのが、自分でもわかるし、それに更に興奮する。手が止まらない。やばい。もうイキそう。ティッシィ取らねぇと。  布団から顔を出す。赤い瞳と目が合った。 「時計を忘れたので取りに来たんですが……、何してんですか?」  ギシッ……、ベッドが軋む。目のピントが合わないくらい近くで顔を突き合わされ、体が強張る。小焼の息遣いまではっきりわかる距離だ。被っていた布団を剥がされて、おれは股間を慌てて手で隠した。 「こ、これは、その……朝だから、仕方ねぇだろ……。小焼だって朝勃ちする時あっだろ?」 「は?」  鋭くなった目つきに体が震えあがる。呼吸が浅くなる。あー、駄目だ。蔑むような目にゾクゾクする。隠したものが更に熱くなっていくのがわかる。 「私を呼びながらしてましたよね?」 「そ、それは、その……」 「答えろ」 「ぅっ、してたよ! だって、好きなんだから仕方ねぇだろ! おまえとそういうことしたいんだって……昨日も……言ったし…………」  もう隠し切れない。というか、いつからいたんだろ? 中途半端に触ったままだから、苦しい。気持ち悪いとか思われてんのかな。嫌われるのは悲しい。専属のスポーツドクターも辞めなきゃいけねぇかな。 「ティッシュどうぞ」 「へ? あ、ありがとう?」 「どういたしまして。見ててやるから、続けてください」 「えっ」 「ほら、早く。きちんとイケたら、何か考えておきます」  小焼は勉強机前の椅子に座って、おれを見る。続けろって……言われてもな……。 「もうズボンも下着も脱いだらどうですか?」 「は、恥ずかしいだろ!」 「何言ってんですか。同じモノついてんですから見慣れてますよ」 「おまえじゃなくて、おれが恥ずかしいんだってば!」 「はあ? セックスしたいって言っておいて恥ずかしいって何ですか?」 「あー! わかった! わかったよ! やりゃ良いんだろ!」  息があがる。期待で、胸がドキドキする。ズボンと下着を脱いだだけなのに、小焼に見られてるってだけでイッちまいそうだ。鋭い視線が肌に刺さる。興奮してる自分にまた熱が上がってしまう。恥ずかしいことしてんのに、興奮するなんて、変態か、おれ。 「ふっ、ん……んっ……!」 「声、我慢しなくて良いですよ。私しかいませんし」  だからって喘ぐのも恥ずかしいだろ! とは言えない。服の上から乳首を摘む。撫で擦るだけで、電流が流れるような快感が走る。元カノに散々弄り回されたから、敏感になってるんだけど、気持ち良いとこが増えただけだから悪い気はしない。 「乳首感じるんですね?」 「ンッ、昔色々あったから」 興味無いって顔してるな。自分から聞いたくせに。 利き手とは逆の手で棹を扱く。あんまり強く扱くと、刺激に慣れちまいそうだし、傷つける危険がある。ちんこ怪我したって病院に行きたくない。医師免許を持ってるだけに余計に恥ずかしい。  小焼は相変わらず冷たい視線をおれに向けている。その視線が気持ち良い。背筋がゾワゾワして、腰が疼く。そろそろ出そうだ。ティッシュを取る。 「小焼、おれ、も……っ、イッ、きそ……!」 「見ててあげますよ、変態」 「ヒッ、あっ……あっ……!」  体を丸めて、ティッシュに欲を吐き出した。ドロドロしてあったかい感触で手が濡れる。息を整える。恥ずかしくて顔を上げられない。視界につま先が見えた。頭をぐしゃぐしゃ撫でられて、少し痛い。 「よくできました」 「あ、ありがとう……?」 「では、ジョギングしてきますんで、きちんと掃除しててください」  小焼はいつもの声色で、おれにそう告げたら出てった。  ……頭、撫でてもらえた。嬉しい。なんか、すごく嬉しい。  ちんこを綺麗に拭いて、使用済みのティッシュをゴミ箱に入れようと腰を上げる。既にくしゃくしゃに丸まったティッシュが入ってた。嗅いでみる。独特の匂いがした。これが小焼の精液の匂い……。持って帰るか少し悩んだけど、気付かれた時が怖いから戻して、下着とズボンをはいた。  洗面台で顔を洗い、持参した歯磨きセットで歯を磨く。うん、輝く白い歯だな!  部屋に戻って、掃除をした。タバコ吸って待っとこ。カバンから取り出して、火をつける。煙が部屋を漂う。肺までゆっくり吸って、ふぅ、と吐き出した。やっぱり辛いほうが好きだ。体に悪いってわかってるけどやめらんねぇや。 「タバコは庭かベランダかキッチンで吸えって言いましたよ。げほっ、けほんっ」 「おっ、わりぃ。そうだったっけ?」  ジョギングから戻ってきた小焼にえらく説教された。  忘れてたんだから、仕方ねぇじゃん……。とは言えなかった。

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