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第10話
熱を含んだ赤い瞳に睨まれる。それだけで全身の血が沸騰しそうなくらいに興奮した。
引っ張られる度に首が軽く締まる。ちょっと意識が持ってかれそうになった。キスしてる時なんて酸欠でぼーっとしたくらいだ。ふあふあしていて、浮遊感があって、きもちいい。
小焼はおれの上に乗っている。ちょうど尻に完全に勃起したおれ自身が当たっている。ズボンにしみができてんのは、自分で気付いてた。小焼に何か言われる前に脱ぎたかったけど、気付かれちまったようだ。右手でゆるく撫でられる。それだけで、甘い吐息が出ちまう。
「っぁ、小焼」
「着替えたのに、また汚すんですか?」
「そんなこと言われてもっ! ィッ! いだっ、痛いって! 痛いぃ!」
「本当に痛がってんですか? 腰ガクガクしてますけど」
「痛いもんは痛いんだってばぁ!」
わかってるくせに、意地悪だ。リードを引っ張られて、首吊りになっている。あ、だめだこれ、苦しい通り越して、気持ち良くなってきた。
ガチャンッ、と音がして、首輪が外れて、おれはベッドに倒れる。小焼が驚いたように目を見開いてたから、外したわけではないようだ。……セーフティ機能ついてんのかな。
「あまり強く引くと抜けるんですね」
「そうみたいだなぁ」
「……コッチ、試します?」
「もう試さなくて良い!」
ハーネスを見ながら言われたので、首を横に振る。小焼は首輪とリードを置いて、ついでにローションとアナルプラグを手に取った。あ、ほんとにやる気なんだな。
今日はプラグを入れるとこまで。が、目標のはずだ。入れた後はどうするか聞いていない。
視界に入ったカレンダーの今日の日付には、練習試合と書いてあった。今朝は忘れてて遅刻したくせに。
明日の予定は書いていない。バイトも入ってなさそうだ。完全にオフなんだと思う。
それなら、セックスできるんじゃねぇかな? と思ったけど、小焼が「プラグまで」と言うんだから、今日はプラグまでなんだ。その先は、おあずけ。
おれがローションを手に出している間に、小焼は服を脱いでいた。いつも練習の時に見ているから、上は見慣れたもんだ。綺麗についた腹筋。そんでもって、胸筋。やっぱり巨乳だよなぁ。健康診断のついでにふざけて測定したらFカップだった。で、下には、おれよりもご立派な逸物だ。つんつるてんなのは、剃ってるからか?
ヘッドスペースにゴムが二種類置かれてんのは、片方は店員オススメのアナルセックス用の品で、もう片方は普段使ってる物なんだと思う。
「なあ小焼。このベッドで今まで何回オンナ抱いたんだ?」
「お前は今まで食べた豆大福の数を覚えてるんですか?」
「わかんねぇな!」
こりゃけっこう抱いてそうだ。小焼は顔が綺麗だし、筋肉も立派だし、なによりも、水泳のことで注目されてっから、モテる。そりゃあもう、モテるんだ。
「付き合ってください」と告白されたら、断る理由もないからって付き合ってるようだけど、だいたいすぐ別れる。しかもフラれてる。一度、小焼の元カノに別れた理由を聞いたら、イメージと違ったからと答えられた。これでフラれる小焼も可哀想だが、言いたいことはわかる。無愛想でほとんど無表情だし、寡黙でオレ様系のイメージがついてんのかもしれない。
長く付き合ったら食べ物のことには饒舌になるし、酒が入ると多弁になる。一番イメージとかけ離れるところが、スイーツ好きってところかもしれない。
小焼が「ラブホでスイーツフェアしていたので、彼女と行ってきました」と言うだけで、あ、こいつ、彼女を食べずにスイーツ食べたなと思うから、フラれるのは、そういうところのアレコレ、だと思う。
とりあえず、おれは、小焼の、真面目で良い子なところを再認識するか。きっとちょいワルのイメージついてんだろうなぁ、いかついピアスを大量につけてっから。
ローションを小焼の胸に塗って、揉んでみる。思ったとおりに、ふかふかしていて、やわらかい、良い筋肉だ。
「夏樹。胸を揉みたいだけだろ」
「だってFカップが目の前にあんなら揉みたいだろ! きちんとおまえがしたいってことはやっから」
「……夏樹がしたいんでしょうが」
「おう。でも、小焼も、おれとしたいって思ったんだろ? だから、準備してくれたんだろ?」
「それはまあ……そうですね…………」
「あはは、嬉しいよ。ありがとな」
笑いかけたら、黙って頭を撫でられた。頭を撫でられるのは好きだ。手があったかくて、好きだ。
あー、やっぱり、おれ、小焼のこと好きなんだ。
「あの、ずっと胸を揉まれても……」
「わりぃわりぃ! 触り心地が良くてつい! 乳首は感じねぇのか?」
「お前が感じ過ぎなんでしょう」
「ァッ! ンッ……、抓るなよぉ!」
服を脱がされて乳首を抓られる。痺れが全身を駆け巡ってく。気持ち良い。けど、小焼にも気持ち良くなってもらいたい。こいつ、どこが好きなんだ?
唇を突き出したら、噛み付くようなキスで応えられた。舌を撫でる。絡めて、互いの唾液を飲むこむ。歯列をなぞる。尖った歯だ。小焼の歯は肉食動物のように尖ってるから、噛まれたら痛いと思う。
キスをしながら、小焼自身にローションを垂らして撫でる。腰がビクッと跳ねた。冷たかったかな? 手コキしてやろっと。
「は、ぁ、……! んっ、ぁ……!」
「気持ち良いか?」
「聞くな!」
「でもさ、教えてくれねぇとわからないんだよ。おれも男同士でヤッたことねぇから、小焼の気持ち良いとこ、教えてくれ」
「ンッ、ひぁ!」
「おっ、ここか?」
完全に勃起したところで、棹の根本から指を這わせていく。小焼の腰が浮いた。亀頭を撫でられるのが好きらしい。手のひらで包み込むようにして押さえつけつつ、ぐりぐり撫で回したら、今まで聞いたことのない少し高い声が聞こえてきた。
「な、つき! それ、嫌だ!」
「へっ? 嫌なのか? そんなら、やめとくか」
嫌って言うなら無理にしちゃ悪い。手を離したら、鋭く睨んでくる。あ、続けたほうが良いやつか。
もっかい同じように掴んで、棹を上下に扱いてやる。小焼は手を口に当ててそっぽを向いていた。
「声、我慢しなくて良いから聞かせてくれよ」
「ばか!」
「あいあい。バカだよ。それも、おまえのことが超ベリー大好きなバカだぞ!」
「ばかぁっ!」
うん。我ながら、バカなこと言った。声聞きたいな。どうするかなぁ……。
小焼のちんこを扱きつつ部屋を見渡す。スポーツ誌の間にエロ本が挟まっている。よく見たら、本棚にエロいパッケージが並んでいた。
小焼って、ちっちゃくて可愛い色白美少女の強姦モノ好きなんだな。ということは――……。
「小焼。フェラチオ好きだろ?」
「私はイラマチオが好きです」
「……わかったよ」
コレ、口に入っかなぁ……。顎関節症になったら笑えねぇぞ。自分で手当てはできっけどさ。
小焼は何をすれば良いかわかったらしい。口を開いたら、頭を掴まれ、雄々しいブツを突っ込まれた。苦しい。わかってたけど! 苦しい! 顎外れそう!
「はっ、はぁ……はぁ……」
「んー、ンンッ! ん、んんんっ……、……ん、ん!」
喉奥に入る度に脊髄反射で吐きそうになっちまうから、適当に声を出して、喉のスペースを拡張する。こんなところで勉強したもんを活かせるとは思わなかったし、活かしたくなかった! でも、小焼が気持ち良さそうに腰振ってるから、嬉しい。あと、頭撫でてくれるのも、嬉しい。
「っ、く!」
「んんっ⁉」
まさかそんまま喉射されるとは思わなくて、一気に呼吸ができなくなった。苦しい。小焼が口から出ていく。おれは吐く。無理。まじ無理。涙出た。あー、鼻も痛い。鼻にも入った。少し消化された激辛坦々麺と感動の再会を果たしてしまった。ゲボといえば麺類だな! と開き直りたいとこだが、鼻が痛い。
「げほっ! っ、わりぃ。ベッド汚した」
「いえ、別にそれは良いです。……防水シートなんで、すぐ片付きます」
「用意が良いな?」
「必要だと書いてあったので」
小焼はティッシュでおれのゲボを拭き取る。「小焼の精液と坦々麺が混ざって紅白だな! めでたいな!」と言いかけてやめた。きっと殴られる。あと、下手したら、ザー麺を作られそうだ。精液入りの麺料理・ザー麺。なかなか上手く名付けられたな! よし! 絶対に言わない! 鼻をかむ。あー、やっぱ、痛い。麺は出なかったけど、痛い。
「夏樹。これ、まだしないんですか?」
「あ、ああ! 早く入れてぇのか?」
アナルプラグを手に持ったまま小焼は黙る。何か言ってほしいけど、そういうやつだから、仕方ないか。
「小焼、もっかいおれの上に跨ってくれ」
「こうですか?」
「そう。もうちょっと腰上げられっか?」
「……見えないですけど、わかるんですか?」
向かい合わせだから心配したのか、単に気になったのかわからないが小焼が尋ねてくる。
体の構造はよくわかってる。医者だから。
「大丈夫だ! なんといっても、おれはおまえの超スーパーウルトラハイパースポーツドクターだから! それとも、尻の孔をまじまじと見られ、ぁ痛っ!」
「さっさとしろ!」
「殴ることないだろぉ……」
小焼は軽く叩いたつもりでも、おれには大ダメージだ。ちょっと視界に星が散るくらいに。
アナルプラグを横に置いといて、まずは指で慣らしてやる。ローションを手に塗ってから、小焼の尻を撫でる。「良いケツしてんな!」と言いかけてやめた。睨まれてるのがわかる。
壁にそって手を這わし、孔に辿り着く。つついてみる。小焼が息を呑んだ。喉仏が上下するのがエロい。あと、乳があっから最高に眺めが良い。とりあえず、手コキしてやりつつ、周りを揉んでやわらかくする。
「っ!」
「痛いか?」
「だい、じょうぶ……」
膝立ち状態の小焼の脚が震えている。潤んだ赤い瞳が綺麗だ。手がおれの肩に置かれてっから、唇を噛んで声を我慢している。
「痛かったら言ってくれよ」
「っはい」
「ん。そんじゃ、だいぶほぐれたから、指入れてみっか」
脚に力が入って見えた。緊張してんのか? 可愛い。さて、こっからわからねぇんだよな。小焼は力を抜いたら開くほうか? 力 んで開くほうか? 肛門 括約筋 は力 んで開くから、力 んでもらったほうが良いかな。でも、小焼は「汚しそうで嫌だ」と言いそうだ。きっちり、ローションを準備して、シーツまで防水にして、アナルプラグで拡張もしようとしてんだから……真面目過ぎて、面白くて、可愛いな。
「小焼、力抜いてくれ」
「抜くって?」
「あー、じゃあ良いや。キスしてくれ」
他のことに集中させたらいっかなぁ。唇を重ねて、舌を絡ませる。もっと、キスに夢中にさせねぇと。もっと、もっと。もっと。ねちっこい水音が鳴るように舌を絡ませる。左手に握ってる小焼自身が震えていた。興奮してくれてるようだ。やっぱりこういうのが好きなのか、こいつ。
「ァッ!」
「指、入ったのわかるか?」
「ぁ、な、つき! ひっ、ぁ! ァッ」
反応が良いな。良過ぎるくらいだ。自分で開発してたもんな、おれが触ったら、もっと気持ち良いかな?
さて、小焼の好きなところはどこだ? イイトコロに微かに当たってるから、喘いでいるはずだけど、確実にイイトコロを見つけてやりたい。
「アァッ!」
「お、ここか?」
「ぃ、やだ! なつき、そこ……いや、だッ!」
「本当に嫌ならやめっけど、嫌か?」
「ひっ! ぁっンンッ」
続けて良いんだよな? 喉をそらして感じている小焼は綺麗だし、めちゃくちゃエロい。指の腹でコリコリしたところを触ってやる。小焼は首を横に振ってた。
「小焼、気持ち良いか?」
「聞くなばかぁ!」
「だって、こればっかりは、小焼にしかわかんねぇしさぁ……。それに、小焼が痛かったら嫌だから」
「ンッ、ん、きもち、……いいっ、……! きもちい、から、聞くな……! あッ! そこ、な、に?」
「ここはな、前立腺って言って、男にしかない臓器だよ。大きさは、ちょうど栗の実くらいで、形も栗っぽいかなぁ。前立腺ガンって聞いたことねぇか? あれのとこ」
おれの説明聞いてんのかなぁ……、聞いてないか。口も半開きでよだれが出ているくらいだし、ガマン汁でおれの手もぐちょぐちょだし、水音が鳴るくらいだ。
あんなに声を我慢しようと唇を噛んでたのが嘘のように喘いでいる。とろとろになってて可愛い。
「な、つき! もっ、ィっ……、く、出る、ッ!」
「痛ぁああ!」
肩に激痛が走る。噛みつかれた。こいつ、イク時に噛むのか。そういや、ストローもよく噛み潰してるし、イライラした時も爪噛んでる。噛み癖あったの忘れてた!
おれの腹に小焼の精液が張り付く。ドロドロであつい。イッて力抜けてっから、指もう一本入っかな? プラグを入れるには、指が二本入らなきゃ厳しいはずだ。人差し指をゆっくり挿す。いけそうだ。
「小焼、指二本入ったけど、わかっか?」
「わかるかばかぁ!」
「まあ、だよな」
とりあえず、小焼のイイトコロを刺激しつつ、ほぐしてやるか。あ、これもマッサージだな。
気持ち良さそうに喘いでるから、おれのちんこ入れたいけど、今日はプラグを入れるだけ、と決めてるから……。我慢我慢。
「なつ、きっ、あ、なつき……、抜いて」
「おう。わかった」
痛かったのかな? 指を抜く。ローションでテカテカになってる。
小焼は膝を折った。ああ、膝立ち状態だったから、疲れたんだな。と見ていたら、急におれのちんこを掴んだからびっくりした。
「ちょっ、小焼! 痛い! 痛いって!」
癪に障ったのか、気まぐれなのか、何なのか、不明だけど、小焼は突然フェラを始めた。どうしよう、痛い。すっげー痛い。やばい、涙出てきた。痛い。
「小焼痛い! 痛いって! タンマ! タイム! ストップ!」
小焼が顔を上げる。顔だけ見たら美少女じゃねぇかな、と思うくらいには綺麗な顔だ。顔が良い。だが、めちゃくちゃマッチョだ。全力で殴ってきたら、一撃で殺されそうなくらいには、マッチョだ。
「おれにしなくて良いから。なっ? 今日は小焼のケツにプラグ突っ込むんだろ?」
「その言い方、気に食わない」
「そりゃごめん」
「……私ばかり、良くなるのは、不公平だと思って……」
「おれのことは気にすんな。後でハーネスでお散歩してくれたら良いからさ!」
「は? したいんですか? お散歩」
「モノの例えだ! モノの例え!」
あっぶねぇー! 冗談で言っても本気でやられちまいそうだ。ハーネスつけてお散歩……、想像したらゾクゾクした。これはいけない! かなりやばい! 小焼は考えたような仕草をした後、後ろを向いた。
「じゃあ、してください」
「こっち向きで良いのか?」
「顔見られるの恥ずかしい……」
ずっと見てたの気付いてたのか。そりゃ気付くか。
四つん這いで尻を突き出す姿がこれまたエロい。「美術の教科書に載ってそうだな!」と言いかけてやめた。蹴られそうだ。指が入ったし、だいぶほぐれたから、もう大丈夫だろ。アナルプラグにローションを塗りつけ、ゆっくり押し込んでやる。くぐもった声が聞こえてきた。
「小焼。入ったぞ」
「……ありがとうございます?」
「どういたしまして?」
互いに疑問系だ。
小焼はそそくさと服を着ていた。本当にしばらく入れとくんだな……。
おれの下半身の熱はどうすっかな。生理現象だから放っといたらおさまっけど……また前のように小焼に見られながら自慰するか? おれが考えている間に、小焼はダンボール箱を運んできた。な、何だ?
「何持ってきたんだ?」
「五日前に母から届いたんです。私への物と一緒に夏樹にって。今思い出しました」
「へ、へえ」
段ボール箱から取り出されたのは、ゴスロリだ。いつものことだからもう驚かない。ヘッドドレスに犬の耳がついている。スカートにも尻尾だ。
「全裸にハーネスでお散歩するか女装してハーネスでお散歩するか、どちらにしますか?」
「何だよその選択肢……」
「選べ。選ばないなら私が決めますよ。どーちーらーにーしーよ――」
「女装で!」
その歌そんなに低音じゃなかったろ! 怖ぇよ! とは言えない。夜だから、人通りは少ないはずだ。この辺はそんなに賑わってねぇし。
きっと……人に見られることは……ないはず。
おれがハーネスでリードを引っ張られていても、誰も気にしない、はず。
「下着無しで」
「な、何で⁉」
「全裸じゃないからです。あと、その洗練されたデザインに下着が合わない」
ノーパンは合うのかよ! とは言い返せない。パニエはくし、きっと見えない。大丈夫だ! 暗いし!
「勃起したまま女装してるってなんだかすごいですね」
「おまえがやれって言うからだろ!」
「強制はしてないですし、拒否しても良かったんですよ。変態」
「うぅ……」
おまえだって、アナルにプラグ入ったまんまじゃねぇかよぉ! 言えないけど!
ハーネスをつけられる。デザインは可愛いんだけど、今はデザインの問題じゃない。小焼はエコバッグに水のペットボトルを入れていた。嫌な予感がする。
「では、行きましょうか」
「……おう」
こうして、小焼と夜のお散歩が始まった。
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