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第12話

 熱を含んだ赤い目が潤んでいる。怖いくらいに綺麗な赤い目だ。意志が強くて、誰も寄せ付けない高潔さがある。思わずため息を吐いた。なんだろう、これ。感嘆の息ってやつか?  光に寄っていく虫の気持ちがよくわかる。おれには、小焼が眩し過ぎるんだ。近くにいるけど、どっか遠い。近寄ろうとしたら遠ざかる。いつも前ばかり見てるから、後ろを追うやつに気づかない。  今、やっと、振り向いてくれた。やっと気づいてくれた。やっと……。  頬を撫でて、唇を軽く重ねた。 「ほんとに、良いのか?」 「……ここで嫌って言ったらどうするんですか?」 「うーん……、そうだなぁ……、小焼が嫌なら無理強いはしない! おれは、おまえが『よし』って言うまで待つ!」 「はあ?」 「というわけで、どっちなんだ?」  「ご褒美」とは言ってたけど、小焼だって不安なはずだ。表情は変わらねぇけど、微かに手が震えてる。こいつでも緊張することあんだな、なんだか可愛い。  引っこ抜かれたアナルプラグがベッドに転がっていたから拾い上げる。 「おれのエクスカリバーのほうが、これよりデカいけど!」 「ばかか?」 「おう……」 「お前のエクスカリバーは、今日何回引き抜かれているんですか。アーサー王がタイムループしているんですか」 「み、湖の女神から貰ったかもしれねぇだろ!」 「そういう知識はあるんですね」 「まあな! で、どうすんだ?」 「……したくないんですか?」 「そりゃまあ……したいかしたくないかで聞かれたら、したいけど。でもさ……、ほんとに、良いのか?」  頭を撫でられる。返事としては十分過ぎた。ほんとに、良いらしい。 「じゃあ、痛かったらすぐ言ってくれよ」 「わかりました。蹴ります」 「最悪の場合死に至りそうだから蹴らないでくれ」  ぷいっとそっぽを向かれた。小焼は毎日ストレッチして体がやわらかいから、いわゆる正常位ってやつでもできるだろうけど……やっぱ後背位のほうがやりやすいかな。おれも同性相手だと初めてだし。 「小焼。女豹のポーズしてくれ。超セクシーに谷間作る感じで」 「蹴りましょうか?」 「冗談だから! とりあえず、プラグ入れた時と同じようにしてくれ」  おれを鋭く睨んだ後、小焼は女豹のポーズをしてくれた。今すぐ頭側に回り込んで谷間を見たいけど、絶対殴られるからやめておこう。  さて、「めちゃくちゃ良い尻してるなぁ」って言いそうになったけど蹴られそうだから抑えつつ、丘を撫でる。ビクッと体が跳ねた。尻撫でられるの好きなのかな。  壁に沿って孔に辿り着く。ローションが垂れている。まるで女の股のように濡れてんなぁ。  自分の体が熱くなるのがわかる。今日はずっと熱いまんまだ。芯が疼いてる。早く入れたいけど、もう少し慣らしてやんねぇと。中指と人差し指を挿す。小焼が微かに呻いた。 「痛いか?」 「だい、じょうぶ」 「痛かったらすぐ言えよ」  小焼のイイトコロは……ここだ。指の腹に少しコリコリした硬いものが触れる。触った瞬間に甘い声がこぼれ落ちていた。 「ゃ、な、つき。そこ、……ぃ……やっァ」 「おれ、小焼の嫌なことはしたくないから、嫌ならやめっけど、どうする?」  この「嫌」は、やめてほしいって意味は無いやつ、だと思う。しっかり慣らしてやらなきゃ。 ゆるゆる撫でつつ、指を出し入れする度、小焼はいつもよりも高い声で呻く。顔が枕に埋まってるから声はくぐもって聞こえるけど、甘く香る。  首を横にいやいやと振っている仕草が幼くて可愛い。やっていることとのギャップがありすぎて、軽く混乱してしまう。 「もっ、いぃ、から……、はや、く、入れろ……!」 「きちんと慣らさねぇと、おれのマグナムは入らねぇよ」 「お前のは散弾銃の間違いだろ!」 「お、おう……。もう、平気そうだな」  指を引き抜いて、ローションを手に取る。女と違って自力で濡れねぇから、滑りを良くしておかねぇと傷ついちまう。切れ痔とか可哀想だから、ちゃんとケアしてやらねぇと。  おれは小焼のパートナー。超スペシャルテクニシャンのスポーツドクターだからな!  アナルセックス用らしいコンドームをつけて、ゆっくり挿し進める。やっぱり少しキツいか。 「っ、ん……ふっ、……ぁん、ん……」 「小焼大丈夫か?」 「もっ、入った……?」 「まだ先だけだ。痛いならすぐ抜くから言ってくれよ」  返事は無い。大丈夫か? 小焼は枕を抱き寄せていた。筋肉が緊張しているのが見える。力を抜くか、更に力んでもらわねぇと……。  手を伸ばして小焼のちんこを掴む。ご立派なモノだが、半勃ち状態だ。扱いたら、徐々に熱くなって、ぬめりが増してきた。先走りのガマン汁が手にまとわりつく。ローションを手に塗って、更に扱いてやる。 「ぁ、っふ……は、ぁっ! んぁ……んん……んぅっ!」 「小焼。声聞かせて。おれ、小焼の気持ち良さそうな声好きだ」 「ぃ、やだ……! やっ、イッ、あ……ああんっ! ひっ! にゃッ」 「ん。気持ち良いか?」 「ィッ! あ、アッ! ……ん、んっ、ん、ん、や、やだ、なつ、き……!」 「あいあい。先っちょ弄られるの好きなんだよな」  片手で棹を扱きつつ、たまに亀頭を摘んで刺激する。その度に締め付けが強くなるから、意識を持っていかれそうになるけど、奥歯を噛み締めて、なんとか耐える。  小焼を気持ち良くしてやらねぇと。わざわざおれとアナルセックスする為だけに、自分で開発までしてくれたんだ。その気持ちに応えてやりたい。どうにか三分の二入った。(ひだ)に当たっている気がする。あ、そうだ。コールラウシュ(ひだ)だ。浣腸カテーテル挿入時に長さが……って、今そんなこと考えてる場合じゃねぇな。入れてるだけなのに意識を持っていかれそうだ。これより奥は、まだ無理そうだ。  小焼は短く「はあはあ」と息を吐いている。吐息に含まれる色気が凄まじい。顔を見たいけど無理そう。恥ずかしがってるもんな。慣れるまでこのまま。小焼のちんこを扱きつつ背中に唇を落とす。赤い花が咲いた。何か話してやったほうが良いよな。えーっと、話題。何か話題……。 「小焼。ここの毛も、剃ってんのか?」 「……水の抵抗を受けるんで」 「それもそっか」  無駄な毛は剃り落とすもんだな。小焼がヒゲを生やした姿なんて、一度も見たことがない。カミソリ負けしてる姿は見たことあっけど。脇毛もすね毛もチン毛も無い。モデルのようなボディだ。おれはありのままだってのに。 「それより……、いつまで……このままなんですか?」 「急に動いたら痛いだろうから慣らしてんだよ。入れるのもやっとなんだから」 「っも、良いから……動け!」 「わかった。小焼が動けってんなら、動くよ」  腰に手を添えて、ゆっくり律動を始める。奥に、キュッ、と締め付けてくる場所がある。 一番下の襞はヒューストン弁だっけ? 勉強しなおさねぇとな。 「ぁっ、はぁ……! ンッ……、あ……、っ、アッ!」  コリコリした確かな手応えに目掛けて刺激を与え続ける。握り締めた小焼のちんこが震えてる。脈動が強くなってきた。手にまとわりつくガマン汁もにちゃにちゃと卑猥な音をたてる。わざと水音が聞こえるように触ったら、小焼は更に興奮したようだ。 「なつ、き、なつき! ァッ、んんっ、あ! な、つき、ィッ! ァッ! ッー!」 「ぅくっ!」  急に締め付けが強くなった。おれはその瞬間に本日何本目かのエクスカリバーを引っこ抜かれた。 「わりぃ……、小焼。おれ、イッちまった……」 「ぁ……ふ、……ん……あ……」 「でも、まだできっから! ほら、おれのエクスカリバーマグナムは元気だ!」  ゴムを取り替えて、もう一度小焼の中にお邪魔する。ほぐれてすんなり入るようになっていた。全身の血液が沸騰したかのような興奮に()き動かされて、腰を振った。 「ァッ! や、……やだ、……な……つ、き! ぃっ、はあ……、……あ!」  やっぱり顔が見たい。引っこ抜いて、正常位にさせてもらう。体がやわらかい小焼だから、この体位が簡単にできるんだ。おれには絶対できない。  顔が見えるようになって、小焼は口を手で押さえて、そっぽを向いていた。仰け反った喉仏が動くことさえ、美術品を見ているかのようにエロくて綺麗だ。 「ひっ! なつ、きぃっ! あー、あああっ……やッ! ン! あ、いっ、な、つき」 「あいあい。気持ち良いか?」 「……ィっ! い、……ぁッ、う! ……そこ、へんっ、ンッ……! な、に……?」 「ん、そっか。ここはな、注腸造影や内視鏡検査の際に病変の位置を知る――って、聞いてねぇな」 「ッあ、ァあ……! あ、ぁッぅ……んっ、んっ」  声が我慢できなくなってきてるな。すすり泣くような嬌声が耳に流れこんでくる。自分の中の雄が奮い立たされる。孕ませたい、なんて思う。孕むわけがないのに。 「な、つき、……ゃだ! ここ……っぉかしっ、おかしく、なっ、……! ァッあ、ここ、はぁ、やら、ゃらぁ! ぉか、し、ッ、ぃ」 「おかしくなってもおれが面倒見てやっから。ほら、ここか? 気持ち良いか?」 「はぁ、っ、ぁアッ! ぃ、おかし、くなるから……、ゃ、こわぃ! きもち、い、こわぃ、もっ、やら……なつき、なつ、き、や! ぃ、ァ! こわ、い!」 「ん。大丈夫だから。遠慮なくイッとけ? ほら――痛ぁああっ!」  できるだけ優しく声をかけてから、イイトコロ目掛けてガツンと突き上げる。途端に小焼は、おれの腕を掴んで肩を引き寄せ、噛み付いた。小焼の腹とおれの腹の間に精液が散る。噛み癖のこと、忘れてた。噛まれた痛みでイッちまった……。小焼から引き抜く。ローションが垂れてくる。なんともまあ、卑猥な絵面だ。もっかいしたいけど、小焼は疲れてそうだ。精液の溜まったゴムを摘み上げる。 「なあ小焼、これ、胸に塗って良いか?」 「殴るぞ変態」 「ごめん」  やっぱり駄目か。さっきまであんなにトロトロのところてんのような感じだったのに、もう普段の仏頂面だ。可愛さはどこに消えたんだよ! 言えねぇけど!  巨乳に顔を埋めたいと思って抱きついたら、強い力で抱き締められて、背骨がイッちまいそうだった。頑張ったらおれの首の骨折れるんじゃねぇか? 首輪のことを思い出して、腰を痺れが駆け巡った。あー、やっぱりまだしたい! 「小焼、もっかい、したい!」 「『待て』」 「……わかった。小焼が、『よし』と言うまで、おれ、待つから」  恋人としての意味でパートナーになれたんなら、きっとこの先もチャンスはあるはずなんだ。今はそれを楽しみに眠ろう。…………興奮して眠れねぇ! 「小焼……、おれが自慰するの、見ててくれ」 「良いですよ、変態」 「あはは、すごいゾクゾクする」  蔑んだような赤い目が見てくる。小焼の目を見ながら、手を動かす。小焼を犯してるようにイメージしながら、一気に絶頂へ向かう。あ、顔にかけちまった……。 「わりぃ! わざとじゃねぇから!」 「別に怒ってないです。殺したいだけで」 「それ、怒ってんだよ!」  この後。おれは小焼に首輪をつけられ、勉強机にリードで繋がれた。トイレに行きたいって言ったら、ご丁寧にペットシーツが出てきてびっくりした。なんであるんだよ! 本当にこれ、小焼の恋人になれてんのかな……?

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