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第30話

 小焼は嘘を吐けるようなやつじゃないってわかってる。  だから、さっきの言葉は、優しさで言ったわけじゃない。  3つ目の豆大福を頬張っている小焼を横目で見つつ、タバコに火をつける。この調子だと、またすぐに無くなりそうだ。豆大福も、タバコも。 「可愛い外観ですね」 「そうだなぁ。で、どの部屋にする?」  けっこうファンシーな外観のホテルだったから、男同士で来るのも奇妙な感じだ。内装もメルヘンな雰囲気をしている。女子会とかしたら盛り上がるんだと思う。  どの部屋だろうが料金は一律だから、テキトーに選んだら良いんだろうけど、部屋写真がけっこう面白い。全部『カワイイ』のは、ここの建築デザイナーのこだわりかもしれない。 「小焼。この部屋プールあんぞ!」 「……川で泳いだので、もう泳ぎたくないです」 「そっか。そうだよなぁ」 「ここ、滑り台ありますよ」 「滑り台からそんまま連結合体して遊ぶやつか」 「宝剣が折れそうですね」 「痛そうだな。やめとこ」 「それで病院行くのも恥ずかしくないですか?」 「恥ずかしい!」 「無難なやつにしませんか?」 「おう。あ、休憩か宿泊かどっちにする?」 「明日の講義は午後からです」 「おれも。じゃあ、宿泊にすっかな」  小焼がヤッてすぐに動けるかわかんねぇし。  部屋を選んで、案内に従って進んでいく。この光る案内を考えた人は天才だと思う。  埋まってる部屋は現在お楽しみ中なんだろうなぁ。部屋にいるのが男女なのか女女なのか男男なのかはわかんねぇし、気にしないほうが良いか。  テキトーに選んだにしては、無難な部屋だったと思う。プールも滑り台も無い。あったら絶対おれは沈められていたと思う。いや、でも、泳ぎたくないって言ってたからプールにすら行かねぇかな。  ベッドサイドにルームサービスの案内があった。おっ、スイーツフェアやってる。 「小焼ー、白玉あんみつパフェ頼むか?」 「いらないです」 「じゃあ、ちょっとこっち来てくれ」  部屋を落ち着きなく歩いている小焼に声をかける。ウロウロしてるなんて珍しいな。どこでも落ち着いてるようなやつなのに……。赤い瞳が熱っぽい。だいぶ腹減ってんだな……。  ベッドの上に立てば、おれのほうが背が高くなる。小焼の頬を撫でて唇を塞ぐ。甘い。わかってたけど、あんこの味がする。あと、梅の味。なんとも言えないビミョーな味わいがする。 「舌、出して」 「ンッ……」  舌を吸いつつ体を撫でる。やっぱりガタイが良い。おれよりもずっと筋肉質で、がっしりしている。腰を撫でたらビクッと反応された。唇を離す。銀糸を指で拭う。赤い目が潤んでいる。シャワールームやトイレで見た時と同じ目だ。 「……まだ、準備してない、から……『待て』」 「ん。わかってる。おれ、待ってるから」  少しふらついてたけど、大丈夫かな……。  小焼はボストンバッグからポーチを取り出して歩いていった。……もしかして、一式持ってきてたのか? なんだよそれ、すっげぇエロいな……。ずっと、いつシても良いように持ってたのか? え、それじゃあ、おれん家でもヤれたってこと? いやいや、ふゆがいたから絶対できない!  スマホが震えていたので、確認する。ふゆからメッセージが届いていた。 『お兄ちゃん達、救助したの!? ネットニュースになってるよ!』  添付されていたリンクを開く。何でおれらの名前がわかられてんだ……? 学校名までしっかり……。やっぱり何処で誰が何をしてるかわかんねぇもんだな。小焼が泳いでいるところも、おれが診ているところもしっかり撮られていた。  女の子は助かったんだな……。それだけわかれば良いや。ふゆにはスタンプだけで返信しておいた。 「ふゆですか?」 「おう。おれらネットニュースになったみたいだぞ。ほら」  戻ってきた小焼に記事を見せる。興味が無いようで、スマホをそのまま返された。早くシャワー浴びて来いってか。 「よし。そんじゃ、おれもシャワー浴びてくる!」 「白玉あんみつパフェ食べて良いですか?」 「おまえ、それ、さっきいらないって言っただろ。良いけど。じゃあ、食べ終わった頃に出るようにしてやるよ!」  と言って、浴室に入ったものの、白玉あんみつパフェがすぐに部屋に届くかどうかわかんねぇな。きちんとキレイキレイしないとな。キレイキレイー。……やべぇ、なんか緊張してきた。小焼がしたいって誘ってくれただけでもドキドキしたのに、今から、本当にそういうことするって考えたら、すげぇ緊張する。え、緊張して勃起しないとかない? おれ、大丈夫? 初めての彼女との初夜失敗してんの思い出してつらくなってきた。いやいや、大丈夫。おれのエクスカリバーは元気だ。元気! ……うん、心配しねぇでも、すでに元気だな。良かった良かった。洗いづれぇ。  期待に胸を膨らませつつ、浴室を出る。さすがに素っ裸でベッドに飛び込んだら小焼に殴られそうだから、置いてあったバスローブを着た。  小焼はベッドでストレッチをしていた。多分、日課なんだと思う。胸元に目が行く。谷間ができてるんだよなぁ……。 「おかえりなさい」 「ただいま。パフェは?」 「美味しかったです。……『よし』」  ベッドサイドにさっきまでは無かったローションとゴムが置いてあった。これ、ずっとバッグに入ってたんだよな? すげぇエロいな……。  触って良いんだよな? 思わず胸を掴んだら睨まれた。 「夏樹って胸好きですね」 「でっかいおっぱいは揉みたいだろ?」 「はぁ」  これは普通の溜息だ。エロさも何も無い、あきれたやつ。いつものあれ。  キスしてから、首筋に舌を這わせる。どうやら首が弱いらしく、小さく甘い声が聞こえた。弱いところを見つけられたら少し嬉しくなる。唇を押し当てて、吸ってやる。 「っ痛い」 「お、わりぃ。痛かったか」  そっぽ向かれた。  小焼の呼吸が徐々に荒くなっていってるのが嬉しい。感じてくれてんだな……。口に手をあててそっぽ向いたままで可愛い。こんなに逞しい男だってのに、可愛く見える。 「小焼。バスローブ脱いでくれ。おれも脱ぐから」 「……何で触ってもないのに勃ってんですか」 「あ、これな。シャワー浴びてる時から既にこうなってた」 「変態」 「だって、小焼が誘ってくれたからさ。嬉しくって。いだっ!」  急に自身を掴まれて痛い。星が目の前を散った。小焼は何を思ったのか、すっかり完全体になっているおれ自身に舌を這わせている。ゾクゾクする。歯が当たらないから、舐めてくれるだけなら、安全な気がする。でも、少し刺激が足りない。気持ち良いんだけど、くすぐったい。 「しょっぱい……」  もしかして、味見されてねぇか? もしかして捕食される? おれ、食われちまうの? 小焼の頭を撫でてみる。目がこっちを見る。 「小焼。きもちいから、そこもっとして」  あったかい感触が裏筋を撫でていく。気持ち良い。玉を吸われて、軽く噛まれて痛い。やっぱり味見してねぇか? でも、気持ち良い。少し痛いくらいぐらいが良い。 「……まだ出ないんですか?」 「へ? おれがイクまで舐めるつもりだったのか?」  そっぽを向かれた。どうやらそのつもりだったらしい。それなら、パイズリしてくれたほうが嬉しいんだけど……。小焼は不安そうな表情をしている。 「おまえ、そこまでしておれの精液飲みたかったのか? 精液入りの麺料理でザー麺とか作っか?」 「どんな罰ゲームですか。食べたいなら作ってあげますよ」 「いーや、食べたくない! ほら、おれもフェラしてやっから」  半勃ちになっている小焼自身を掴んで口に含む。竿を扱きつつ、鈴口を尖らせた舌先でつついてやる。おれ、なかなかフェラ上手いんじゃねぇかなって思ってきた。どこにも自慢できねぇ特技だな。ちんこでランドセルを持ち上げるって技くらいに。  69をしたいけど、小焼の尖った歯が当たると死にそうになるし、噛み癖のこと考えたら自殺行為になっちまう。独特の味が口の中に広がっていく。興奮してくれてるってわかるのが嬉しい。頭を撫でてくれるのも嬉しい。 「……っ、あ……、ん……! アッ、なつ、き……、もぅ出そっ……」 「んー!」  深く咥えこんでやる。喉奥で吐き出された欲を受け止めて、飲み込む。今日はきっちり飲めた。  前に自己申告してくれって言ったのを覚えていてくれたようだ。 「おれが言ったこと覚えててくれたんだな!」 「……ばか」 「あはは、わりぃな。バカだよ。それも、ただのバカじゃなくて、おまえのことがめっちゃくちゃ好きなバカだぞ!」 「……」  黙っちまったや。髪を撫でて、唇を重ねて、目を見つめる。怖いくらいに美しい赤い瞳だ。宝石みてぇだなぁ……。キラキラだ。 「下のを咥えた口でキスしないでください」 「それを言うならおまえもそうだから、お互い様になっちまうぞ」  まあ、おれからキスしたんだけどな。  急に痺れが全身を駆け巡る。小焼がおれの乳首を抓っていた。 「い、いきなり、抓んなってぇ!」 「こうされるの好きなんでしょう?」 「好きだけど、あッ! ……ぃ、あっ……ゃ、ぃっく!」 「……お前って、私にぶっかけるの好きなんですか?」 「小焼が目の前で抓るからだってぇ!」  互いに座ってたから、小焼の腹あたりにおれの吐き出した白濁がべっとりかかっていた。すげぇエロい。こういう芸術とかありそうな感じだ。写真撮りたくなるけど、きっと怒るからやめておこう。  興奮が収まらない。抑えらんない。小焼に触りたい。もっともっと、触りたい。抱きつこうとしたら、頭をべしっと叩かれた。痛い。 「何でいきなり叩くんだよ!」 「なんとなく」 「なんとなくで叩くな! 痛いだろ!」 「……夏樹だけなんです。私が叩いても、平気なやつ」 「へっ?」  そう言った小焼は暗く見えた。おれは、小焼がわかりづらいだけで、根は優しいやつだってわかってる。  叩いてしまうのは何をどう言えば良いかわからなくなるから、だと思う。多分。  でも、他人は怖がるんだ。下手したら、傷害事件にもなっちまう。人を傷つけたくないから、わざと遠ざかる。ひとりでいれば、誰も傷つけずに済む。  叩かれて思い出した。小焼がインタビューで答えた意味のわからない言葉。誰も訳していなかったあれは、オランダ語だ。小焼のじいちゃんの母国語。 「Je bent de enige echte(おれにとって、おまえは特別な存在だ)!」 「何故突然そんなこと言うんですか?」 「うん。マジレスありがとな。思い出したんだよ。おまえがインタビューで答えていたことの意味!」 「……良かったですね」 「おう。まあ、それは後で良いや。素っ裸で何話してんだって思ってきた」 「お前は勃起したままですしね」 「今『しね』って言ったか!? 泣くぞ!」 「勝手に泣いてろ」 「ひでぇなぁ、もう」  笑いつつ、ぶっかけたまんまの白濁を拭きとってやる。腹筋が緊張していた。腹の虫の鳴き声が聞こえてきた。やっぱり腹減ってんなぁ。  ベッドサイドからローションを取る。小焼はおれに背を向けた。 「バックですんのか?」 「顔見られるの恥ずかしい……」 「あはは、可愛いこと言うんだなぁ」 「殴り殺すぞ」 「やめてくれ!」  いつでもガチのトーンだから怖いんだよ! 言えねぇけど!  きっと向こう側から見たら胸の谷間が良い感じに見えるんだろうなぁ、と思いつつ、小焼の尻を撫でる。きちんと慣らしてやんないと。普段は出口の所を入口にするために、ローションを垂らしてほぐしてやる。枕に埋まっている小焼が呻いている。 「痛かったら言ってくれよ。あ、気持ち良い時も教えてくれな」 「ばかぁっ! あっ、あああっ、いっ、や、……やだっ、そこ……、い、やっ!」  前にヤった時に見つけたイイトコロを撫でてやる。なんだかだいぶ指がすんなり入るんだけど、何でだ? 「小焼。すげぇ簡単に指入ったんだけど……何かしてたか?」 「プラグ、の……、サイズ、が一段上に、なった」 「拡張したってことか。うん。真面目だな! 痛っ! 蹴るなよ!」 「ひぁ、あ、なつ、き。なつき、もっ、良いから、はやく」 「え? もうちょっと慣らさねぇと……。ほら、まだ指が1本しか入ってねぇから」 「やっ、やら……! そこ、や、らぁっ!」  呂律が回らなくなってきてる……。脳神経に異常とかないよな? 大丈夫だよな? 脳梗塞じゃねぇよな? 半麻痺はなさそうだし、顔は歪んでないから、大丈夫だな。  前も思ったが、こいつ、快感に弱すぎねぇかな……。とろとろになっちまってる……。  再び屹立している小焼自身は透明な液体を垂らしていた。掴んで扱いてやったら、すぐにイッていた。枕が噛まれてる。 「あーっ! あああ……、アッ、……!、……あっ、ああ、いっ、あ!」 「ん。気持ち良いか?」 「きもちいっ、から……、いちいち、きく、にゃー、あっ!」  にゃー。って猫みてぇだな。  そろそろ慣れたかな? 指3本入るくらいだから、なんとかなっか。  指を引き抜いて、ベッドサイドから小袋を取って、ゴムをつける。ついでにローションを塗りつけておく。よし! 「入れっから、痛かったらすぐ言えよ」 「にゃ、あ! にゃっ、ちゅ、ひっ……、あ! ああっ!」  中が吸い付くようにうねってる。ゆっくりゆっくり、このままゆっくり。  小焼って女抱いてる時でもこんだけ喘ぐのか? そうだとしたら、確かに「イメージと違った」と言われそうだな……。そんなことを考えつつ、押し込んでいく。すぐ爆発しちまいそうだけど、なんとか耐えなきゃ。小焼をもっと気持ち良くしてやんないと。腹いっぱいにしてやんねぇと。 「なつき、なつき」 「ん? どうした? 痛いか?」 「はいっ、た?」 「えーっと、まだ3分の1だ」  急に突っ込むと痛いだろうし、おれも締めつけに耐えられずにすぐ引っこ抜くことになりそうだから、時間をかけてゆっくり入れてく。まだ2回目のセックスなんだよな……、これ。  小焼に「好き」と言われてからだとしたら、初夜になんのかな。おれ、興奮してんのに冷静にできてえらい! さすがおれ!  意識が持っていかれそうになる。まだ、まだ、動いてすらないのに、爆発するわけにはいかない。  前にシた時よりも奥に入りそうだ。今当たってんの、腹膜反転部だと思う。コールラウシュ襞だ。膀胱直腸窩を形成してるんだったよな。よし、思い出した。勉強の成果だ。  これより奥、もっと奥。まだ繋がってたい。小焼と深く繋がってたい。 「にゃ、いぅッ! あ、や、そこ、な、に?」 「えーっと、前も言ったような気がすっけど、コールラウシュ襞だ。そんで、もっと奥に入りそうだから……痛かったら言ってくれな?」 「あ、ん、ああっ! あーっ!」 「ちょっ、小焼! しめすぎ、イッ!」  ……こうなる気はしてた。でも、まだ熱は治まらない。まだだ。まだ、できる。  引っこ抜いて、ゴムを付け替える。小焼が涙目で睨んでくる。シーツがベトベトになってるけど、それは清掃員が頑張ってくれると信じておこう! 「まだできっから、大丈夫だ! おれのマグナムはリロードも速いぞ!」 「お前のは散弾銃って前も言いましたよね」 「あはは。呂律戻ったな」 「ばか」 「おう。バカだよ。ほら、続きしような」  ぷいっと前を向いた小焼の腰を掴んで、押し込んでいく。するする入るようになった。じゅぽっ、と襞を通り抜けた音が聞こえた、気がした。小焼の腰が震えている。シーツにドロドロが追加された。イッちまったらしい。あの枕、噛まれ続けてっけど、破れないか気になってきた。 「や、やらっ、なつ、き! そこ、おか、しっ、イッ! あ、や、ァアッ! ああああ!」  あり? 泣いてる? 痛いのか?  もっかい引っこ抜いて、小焼の顔を覗いてみる。涙で枕が濡れていた。やべぇ、泣かした! 「わ、わりぃ。痛かったか?」  小焼は黙って首を横に振る。痛くはなかったようで、そこは一安心だ。  そんでから、ゆっくり口を開いた。 「きもちくて、おかしくなる……」 「あー……、ごめんな。お腹びっくりさせちまったな」  よしよし。  頭を撫でてやったら、小焼は目を細めた。なんだか本当に猫みてぇだな……。気まぐれに懐いてくるような感じ。 「なつき、いれて」 「ん。わかった」  仕切り直し。もう大丈夫だよな?  小焼の「いや」が続けて良いのか止めたほうが良いのか、どっちかわからなくなる。本当に嫌なら、やめたいし。続けてほしいなら、もっとしてやりたいし……。なんか合言葉でも決めたほうが良いのかな。  ちょっと冷えた頭で考えつつ、腰を揺らしてるたいへんエロいネコちゃんを捕まえる。  「猫耳をつけたらネコヤケだな」と言いたくなったけどやめた。今言っても小焼は反応してくれないと思う。 「やっ、そこ、やだ、なに? にゃ、いぅ、あ! ……や、ら、にゃ、か、や!」 「おー、そっか。ここの説明してなかったな。ここは、結腸つって、S字に……、聞いてねぇな?」 「は、あ、アッ! ああーっ! アッ、あぁあ!」 「ッ、小焼の中、とろっとろなのに、きっつ……!」 「うぁ……!あ、……あっあっ! なつきっ、や、ンッ、こわいっ、やら、アッ!」 「大丈夫大丈夫。小焼のお腹は『気持ち良い』って、言ってるから」  顔見てぇなぁ……。きっとすっげぇとろとろでエロい顔してるはずだ。  前を扱きつつ、背中に唇を落としていく。キスマークつけまくっちまったけど、よく考えなくても、これ……後でめちゃくちゃキレられそうだ。やばい。死を覚悟しよう。その前に、気持ち良くて、腹上死しちまいそう。 「アッ、あ、あ、アッ! ん、……んぁ、あっ! イッ、くぅ!」 「ッ――!」  まだ、まだ、繋がってたい。小焼ともっと繋がってたい。  手に吐き出された欲が纏わりつく。もう何回イッてんだろ、こいつ。感じてくれてるのが嬉しい。  かわいい。涙目で睨んでくるのがすごく可愛い。目つきの悪い猫って感じがぴったりだ。 「――――まことに申し訳ございませんでした」 「……別に怒ってないです。殺してやりたいだけで」 「それ怒ってるんだよ!」  その後、小焼が持ってきていたゴムが無くなるまでヤッて、翌朝めちゃくちゃブチギレられた。  床に頭がつくほどに土下座して謝って、どうにかこうにか許してもらえた。豆大福を10個買うってことで。  ベッドに散らかった名残を片付ける。使用済みのゴムがあちこちに落ちている。けっきょく何回シたんだっけ……? いちにーさんしーごーろくなな……。 「夏樹」 「は、はい! 何ですか小焼様!?」 「お前にそう呼ばれたらゾクッとするからやめてください」 「……おう。で、何だ?」 「何個あるんですか、それ?」 「7個だ!」 「回数が多い。しつこい」 「うっ、だ、だってぇ……小焼ん中すっげぇ気持ち良くて……痛っ!」 「お前がフラれる理由がよくわかりました」 「ここでわかんないで欲しかったなぁ」  おれを叩く程度には動けるようになって良かった。ヤり終わって、小焼はしばらくうつ伏せのまま動けなくなってたから、めっちゃくちゃ反省した。 「お前もまめたと同じように去勢されたら良いんですよ」 「嫌だよ!」  物言いは棘があるけど、冗談だってのはわかってる。きっと、おれにしか、小焼が微かに笑ってる時はわかんねぇんだ。  愛しくなってきて、唇を重ねてみた。意外にも応えてくれて、舌が絡みつく。気持ち良い。 「……何で勃ってんですか」 「朝だし?」 「昨夜こんなに抜いているのにですか?」 「うーん。だって、小焼のこと好きだから……、何回でもシたい」 「体がもたないです。それこそ、おかしくなる……」 「おかしくなっても、おれが面倒見てやっから!」 「そういう問題じゃないです」 「じゃあ、何回までなら良いんだ?」 「……3回」 「よし! 次からそうする!」 「次があると思うなんて、おめでたい頭してますね」 「ねぇのか?」 「Looks like I overestimated the number of your brain cells(私はお前の脳細胞の数を多く数えていたようですね)」 「Wow, you really like me(わぁ、おれのことが本当に好きなんだな!)!」 「That’s too bad(知ったことか)」 「小焼って、困ると英語で話すよな……」 「うるさいですね」 「痛っ! もう! 叩くなって! また記憶障害になっちまうだろ!」 「Very funny(はいはい、面白いですね)」  あんなにとろとろになってたのに、またこの態度だ。もう一度キスする。今度は応えてくれなかった。でも、頭を撫でてくれた。嬉しい。  一緒にシャワー浴びようとしたら、鏡を見た小焼がまたブチギレて、おれは冷水をぶっかけられて、放り出された。仕方ないので、持参していたタオルで拭いて、服を着た。  キスマークをつけすぎたことについては反省してるけど後悔はしていない。薄くすることはできなくもないんだけど……、今、小焼に触ることすらできないような気がする。きっと触ろうとしたら殴られる。  とりあえず、帰り支度しよっと……。昼前には学校に着くはずだ。

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