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 久しぶりの雨の前兆なのかやけに薄暗い教室。窓越しに眺めた空に立ち込める雲は分厚く、夕立の予感に俺は軽い溜め息をつく。  橋本がいれば笑いながら突っ込んでくれただろう。あいにく今日の橋本は一限だけ受けてグラウンドに向かい、今頃は大好きな野球に打ち込んでいるはずだ。  補習授業を受ける生徒は一人、また一人と減ってしまって空席が目立つ教室なのに、何故か俺の目の前には壱人と彼女が座っている。こうなってくるともう嫌がらせとしか思えなくなってくる。俺は毎回決まった席に座るわけじゃないのに、俺より後に登校してきた二人は必ず俺と橋本の目の前の席に座る。  今日はちゃんと傘を持ってきた。コンビニなんかで売ってるいつものビニール傘だけど。壱人の彼女、結木さんから借りた傘は相変わらずベッドの上に置きっぱなまま。持ち主の手にはまだ戻らない。  気まぐれ猫は俺の周りを必要以上にうろつくくせに、一向に俺の方を見ようとはしない。真っすぐ前を向いた視界に俺が入ることはない。俺は俺で、なるべく見ないようにしてるのに。わざと。なのに壱人は、うざいぐらいに俺の視界に入って来る。 『頼むから俺の前をうろつくな』  思わず口にしてしまいそうになる。 (なんなんだよ。ホントにおまえはもう)  昔からこいつは何がしたいのかわからないような、奇行に走ることも多かったけど。  俺のことなんか放っておいたらいいのに。一切こっちを見ようとしないし、そっちから話し掛けても来ないくせに。ただいちゃついている自分たちを見せ付けたいようにしか見えなくて、なんとも言えない苛々(いらいら)が募る。 「お。もうこんな時間か。今日の補習はこれで終わりな。米倉、明日も遅れるなよ」  そう先生にからかわれつつ、今日一日の補習授業が終わった。  先生のその声に弾かれるように、散り散りに席を立つ落ちこぼれたち。雨はとうとう降り始めたようで、ぽつりぽつりと大きな雨粒が窓を叩く。  席を立ち、蒸し暑さに開けっ放しだった窓を閉めようとしたその時、窓の外から誰かが俺を呼んだ。

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