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02
仕方がないからカーテンを引くことにする。その後のことは、各々が勝手に想像してくれれば。けど、間違っても恐ろしい想像だけはしないように。俺たちのプレイは至ってノーマルだから。
たまに壱人のバカがスカート穿 いてよとかなんとか文字通りに馬鹿なことを言ってくることもあるけど、俺は断固拒否してるし。
ちなみに今は日曜日の真っ昼間。そしてここは長い間、窓に鍵が掛けてあった壱人の部屋だ。少し分厚いカーテンを引くと薄暗くて、それだけで妖しい雰囲気になる。
壱人の母さんは看護師で、壱人の父さんは人気作家の柴崎誠一郎だ。どうやらおばさんは仕事に行ってるらしいが、この壁の向こうの部屋はおじさんの書斎兼仕事場になっている。
「大丈夫。うちの親父、仕事中の雑音は耳に入らないから」
そんなバカなと突っ込みたい台詞をのたまいながら、壱人は俺の上に乗っかってきた。
俺と壱人は家が隣り同士の幼なじみで、今年の夏休みにどうにか十年もの片思いに終わりを告げた。お互いに両思いなのに同性であることが邪魔をして、想いを伝えられなかった俺たち。
ようやく思いが通じ合ったと思ったら、壱人のおバカな溺愛っぷりが炸裂、今に至るわけだ。
そのおバカっぷりは俺に雰囲気が似ているだとか、同じ背格好だとか。はたまた同じ名前だとか、俺と同じ所にホクロがあるってだけで好きでもない女の子と付き合ってしまった前科があるほどだ。
そのお陰でここ五年ばかり、何回壱人にやきもきさせられて泣かされたことか。なのに全く悪びれもせず、おまえの身代わりだったの一言で済ます悪い男だったりもする。
「泉。ほら、いいから機嫌直せって」
おまけに気まぐれで浮気性だし、本当にどうしようもない。いや、浮気はしてないか。まだ付き合ってなかったし。
「ごめん。どっか痛い?」
……なのに、本当はいいやつだってわかってるから嫌いになれないし。やっぱ、俺も壱人と同じくらいに好きなんだと思う。壱人の背中に必死でしがみつきながら、ぎゅっと唇を噛み締める。
「泉。ほら、ちょっと腰上げて口開けて」
「……あっ、やあっ」
壱人に激しく抱かれながら恋は盲目かあ……、なんてぼんやり考える。どうやら俺も例に漏れずそうらしい。
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