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なんというか、壱人の彼女は平凡な女子高生。そんな噂なら我慢できるし、大歓迎なんだけどさ。
うん。あれだよ。美少女とかの尾鰭がつくから、壱人の隣は美少女が似合うとか余計なことを考えてしまって、揚げ句の果てはその美少女(つまりは俺ね)に嫉妬するなんてよくわからない現象に陥るわけだ。
「……よしっ」
ちょっとだけ気合いを入れて、ばったり倒れ伏したベッドから起き上がる。それから意を決して姉ちゃんの部屋へ向かった。
只今の時間は夜の8時過ぎ。夕食も済ませてしまったし、あとはお風呂に入って寝るだけだ。課題だとかは別にして。
姉ちゃんの部屋は家具や荷物はそのままにしてあって、帰省した時のための化粧品や着替えの洋服なんかも置いてある。姿見の前で一度、全身を見てから三面鏡、いわゆるドレッサーとかいうのの前に座った。
もうおわかりだろうか。俺の単純な思考回路から導き出した答え。それは俺の女装……、じゃないや。コスプレ写真を全校に公開すること。
人を呪わば穴二つ……、じゃないな。虎穴に入らずんば虎子を得ずだっけ。俺ってば馬鹿だから咄嗟に例えが浮かばないけど、つまりは逆転の発想だ。
どうせ女装……、じゃなくてコスプレしたら俺だとわかるやつはいないだろうし、それより壱人の彼女が美少女じゃないってわかればそれでいい。問題はどうやって写真を公開するかだけど、南高校には報道部があり、これがなかなか充実している。
特に恋愛スキャンダルはパパラッチ並に報道していて、毎月ゴシップ新聞を発刊していたり。ちなみに報道部は、校内放送のテレビやラジオまで手掛けていたりする。
つまりは女装……、ああもう訂正するのもめんどくせえし。ま、どっちでもいいか。つまりは女装で壱人とデートをして、パパラッチされればいいんじゃないか?
その写真が掲載された新聞が発行されれば、壱人の彼女が美少女じゃないこともわかるだろうし、二人で出掛けるとなるとエッチ三昧な休日を過ごさなくても済む。別にエッチは嫌いじゃないけど、正直、一日中はきついんだよな。
「俺ってばあったまいい!」
なんて古い漫画の台詞のような台詞を独りごち、俺は覚悟を決めて目の前の化粧品に手を伸ばした。
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