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 ふふん。俺も伊達に5年も姉ちゃんのおもちゃでいたわけじゃないっつの。 「えーと、最初は……」  幾度にも及ぶコスプレ(女装)のお陰か、無意識に化粧の手順を覚えていたりするんだよな。 「確か量はこれくらいだったかな……、わわっ。出過ぎた」  ――が、どうやら腕前はついていかないらしい。 「まあいいか」  それでもなんとか化粧品と格闘すること10分あまり。 「……なにこれ」  呆然と見つめる鏡の中。自分の完成予想とは裏腹に、目も宛てられない姿の俺がいた。  姉ちゃんがやってくれた時はあんなに可愛い……、とか自分で言っといてキモいけどそれなりに可愛いく変身できたのに。目の前の鏡の中の俺は可愛いとは程遠い、見るからにオカマな男子高校生だ。 (……なんでこうなった。全く変身できてないんだけど)  まあさ。俺が化粧が上手いだとか、それこそキモかったりはするんだけど、それにしても酷すぎる。これじゃあ出掛けるどころじゃないし……、うーん。練習あるのみ、かな。  姉ちゃんが次に帰ってくるのは年末だし、このままじゃ俺の『壱人の彼女は平凡な女子高生でした計画』も失敗に終わってしまう。 「よしっ。リベンジ」  そう独りごちて顔をウエットティッシュでごしごしやってると、不意にドアを開けられた。 (わっ、やばっ。母さんか?!)  慌てて顔をごしごしやって、鏡越しにドアの方を恐る恐る見てみると……、 「……泉。おまえ、なにやってんだ」  そこにいるはずがない、つか、(うち)にいるはずがない壱人が立っていた。 「あ、あはは」  えーと。どうやって言い訳しようかな。このままじゃ俺、化粧が趣味の変態野郎になってしまう。壱人は壱人で鳩が豆鉄砲を喰らったようにぽかんとしてるし、なんとか上手く言い繕わなければ。 「そのさ。姉ちゃんがいなくても女装できるようにメイクの練習をしようかな、って」 「なんでまた」  なんでって……。 「その、姉ちゃんがいなくても壱人といっぱいデートしたいな、とか」 「―――っっ」  気付けば無意識に、そんなことを言っていた。

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