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(う、上手くごまかせたか……?)
なんか、無意識に超こっ恥ずかしいことを口走ってしまったような気もするが。恐る恐る顔を上げてみると壱人は両手の拳 をぎゅっと握りしめていて、その手がぷるぷる震えていた。耳まで真っ赤にしているそれが、怒りに震えているようにも見える。
(やっべえ。なんか怒らせたかな……)
とかなんとか考えているうちに壱人のその手がゆっくり俺に伸び、
(――っっ、殴られ……)
次の瞬間、
「泉、かわいいっ!」
「……ほえ?」
予想とは裏腹に、真正面からぎゅっときつく抱きしめられた。しばらくの沈黙の後、
「……壱人。本気でそう思ってる?」
そう聞いてみる。
「もちろん」
「……あっそ」
ってか、その真顔で可愛いとか言ってるやつの顔をちゃんと見てみろと言ってやりたい。可愛いなんてとんでもない。おネエ系のオカマキャラも真っ青ななんともキモい顔をしてるからそいつ。つか今の俺だけど。
一応は付 け睫毛 から何から一通り試してはみた。付け睫毛の付け方だとかその他 諸々 がとにかく面倒臭いし、思っていたよりも難しい。
「ってかさ。泉はそのままで可愛いよ」
「……けどさ。それじゃあ、一緒に出掛けても、手も繋げねえじゃん」
あ。またなんか言っちゃった。まあ、俺もたいがいつける薬がないぐらいのバカだから、さ。
「い、壱人……?」
そしたら壱人はまたぷるぷる震え出して、
「泉ーーっっ!」
「うぎゃっ?!」
そのまま、姉ちゃんのベッドの上に引き倒された。
――……一時間後。
なんというか、自分のこの流され体質と壱人の暴走癖が恨めしい。
「泉。ごめんって」
「――っっ、信じらんねえっっ。姉ちゃんのベッドでとかっっ!!」
結局は本日、何回目かのエッチを致してしまい、姉ちゃんのベッドを汚してしまった。オカマな男子高校生の姿の俺で勃 つ壱人ってば、ある意味すごい。事後の後片付けに奔走 している俺には気づかずに、
「……そうか。でも協力者が必要だな」
そう、ぶつぶつ言っていた壱人。そんな壱人に、俺もまた気づかなかったのだった。
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