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 そう言えば結木さんは背格好なんかは俺とほぼ同じだけど、性格だけは恐ろしいほど壱人に似ている。だから二人は別れた後もこうやって友達でいられるし、結木さんと壱人は笑えるぐらいに気が合っているんだろう。  ……じゃなくて!  今は壱人の一言が問題だっけ。言うに事欠いてそれはない。文句を言おうと口を開けたら、壱人に残りの半分の焼きそばパンを開けた口に突っ込まれた。  なんなんだ、あんたらは。訳わからんと言ってやろうと思ったのに。なんとも情けない動作で口を塞がれる。 「つまりはあれだ。恋人ごっこだな」 「ふが?」  どうやら壱人の一口は俺には少し大きすぎるようで、一口では到底飲み込めなくて、間抜けな声が鼻から抜けた。 「つまりは隠れみのね。正直、新見くんと別れてから迷惑してたのよね」 「?」  二人はなんだか以心伝心のようで、ちょっとだけ妬けるんですけど。ちなみに結木さんは壱人と別れてから、壱人のことを名前じゃなくて名字で呼ぶようになった。 「俺は女装した泉が言ってみれば隠れみのだけど、結木にはそれがないからな」 「そうなのよねー。正直、早く新しいのを探さなきゃ精神的にもやばくて」  俺の両脇から交互にまるでステレオのように聞こえて来る、俺のような凡人にとっては贅沢にも思える人気者の悩みに面食らった。二人ともが学校でも一、二を争うほどにモテるから、恋人がいない状態だと毎日のように告られたり言い寄られたりで大変なんだそうだ。 「一方的な想いを押し付けられるのって、結構、精神的にクルんだよな」 「同感。私の気持を全く無視して一方的にずっと好きでしたとか、伝えたかっただけだから忘れてくれとか言われてもね」 「分かる分かる。一人に絞って誰かと付き合ってるとそれがないからな」  どうやら人気者は人気者で、いろいろ大変なんだなとまるで人ごとのように思う。ほんとに人ごとだけど。壱人も今まで次から次へと取っ替え引っ替え彼女を変えて来たけど、それにはこんな深い意味もあったんだ。  おまけに俺とも絶対に付き合えないと思っていたわけだから、他の誰かと付き合わなきゃいけないジレンマもあっただろうし。

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