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 お互いの姉ちゃんに頭の上がらない俺と壱人だけど、結木さんは絶対、姉ちゃんたちの上を行く。 「さあ、泉ちゃん。まずは下着から行くわよー!」  腕を引っ張りながらそんな信じられないことを言われて、 「えっ、マジ?!」  思わずそう叫んでしまった。瞬間的に自分の格好を思い出して、慌てて口をつぐむ。なんと言うか、今までの変身で(つちか)ってきた来た教訓の一つ。 『声はなるべく出すべからず』  いくら俺が女顔をしているからと言って、声までそうとは限らない。俺の声は壱人のようにクールなわけでもセクシーなわけでもないけど、女の子に比べたらそれなりに低めの普通に男の声だ。 「当たり前田のクラッカー。さあ、行くわよ!」  妙にハイテンションな結木さんは最早(もはや)お年寄りレベルの人にしか分からないような伝説の死語を口にして、俺の腕にがっしり掴まったまま。一路、おそらくは下着屋さんに向かってずんずんと突き進んで行く。何やら楽しそうにニヤニヤ笑う壱人を尻目に、ボヨンボヨンと俺の肘に柔らかいものを押し付けながら。  女の子に下着屋に引っ張って行かれてるのに、自分の表現は擬音だらけだなあ、なんて呑気に構えている俺。それは壱人も同じことで、この状態でも呑気に構えていられるのは普通一般的な高校男子よりは女物の下着を見慣れているからだろう。  なんたって二人とも姉ちゃんがいる訳で、普通に洗濯物の中に母さんのとは明らかに違うセクシーなランジェリーが紛れたりもするし。うちの姉ちゃんに限って言えば、風呂上がりに下着姿で家中をうろちょろするし。壱人は壱人で、姉ちゃん以外にも女の子の下着は見慣れているだろうし。 「ちょ、ちょっ……」  それでも一応はアレだしで、抵抗するも暴走してしまった腐女子のパワーには敵わない。 「彼氏のために可愛い下着を選ぶとか(たぎ)りすぎて死ぬるっっ!」  そう一部の人間にしか分からないことを雄叫んだ結木さんに引っ張られるように、俺たちはショッピングモールに足を踏み入れた。

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