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ガールズ・トーク
結木さんは俺の腕を引いたまま、一直線に下着屋を目指している。二階から三階のフロアにあるのは婦人服がメインのブースで、普段の俺にとっては未開の地だ。
「どうする?」
「ん?」
「新見くんも一緒に行く?」
「あー……」
このフロアに来てから注目を浴びまくっている壱人は行きたいところだけどと苦笑って、
「店の外で待ってるから泉に似合うのを選んでやってくれ」
と、ブース脇にある待ち合いベンチに腰を下ろした。
つーか、壱人。おまえ、俺に似合うのって!
いろいろツッコミどころが満載なんですけど。
まずは俺には姉ちゃんが用意してくれている胸パッド入りブラがあって、それで胸はなんとかなるはずだ。下着自体は見えるわけじゃなし、けど、腐女子の思考を考えれば結木さんは良からぬことを考えているんだろう。
隠れ腐男子ながら、俺も一応は腐男子の端くれ。ベーコンレタスな男の娘キャラには、可愛い下着も必須アイテムであることは承知している。結木さんは恐らくその下着姿でいちゃこらする俺たちを想像してフラグを立てて、激しく振りまくっているんだと思う。それがわかるから、俺は結木さんには逆らえない。
ということは、壱人。おまえだよ。おまえ、絶対、楽しみにしてるだろ?
恐る恐る足を踏み入れつつちら見すると、壱人は爽やかな笑顔を浮かべてこちらに手を振ってきた。イケメンな男前がそんなことをするからほら、こっちまで注目を浴びちゃったじゃん。
まあ、間違いなく美少女の結木さんの方が彼女だと思われてるわな。とかなんとか冷静に分析してたら、結木さんに声を掛けられた。
「ねえねえ。泉ちん。これとか可愛くない?」
「ぶっ!」
ちょ、ゆ、結木さん!
考え事をしていたから気付かなかったけど、俺、いまかなりピンクな世界の中心にいるような。姉ちゃんの下着なんかは見慣れてるけど、またなんというかそれとは次元が違う。フリルだかレースだかよくわからないぴらぴらに飾られたどピンクなブラとショーツのセットを見せられて、俺は思わず吹き出してしまった。
このぴらぴらのを俺のお年玉の中から買えと?
11月に新作のゲームが出るからそれに宛てようと、一銭も使わずに取っといたのに。
冷や汗ダラダラで落ち着かない目を泳がせていたら、
「ひっ!」
誰かに背後からがっしり肩を掴まれた。
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