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 本当に何をしてるんだ俺は。もう何年もこの状態が続いているが、もう限界だ。自分の本当の気持ちに気付いた頃から意図して泉を避けて来たが、もう我慢の限界だった。  遠くに雷鳴を聞きながら仰向(あおむ)いたベッドの視界の先、いつもの天井のシミに視点を定め、思考はよそへ飛ばす。激しい雨音はしばらく続いていたが、そのうちぱったり止んでしまった。いや、止んでくれて嬉しいのだから、止んでしまったって残念そうな言い草はちょっと違うか。  まだ雨は降っているが、ようやく小降りになってきたといったところだ。閉め切ったカーテンの向こう側は見えないから、降り方の確認は出来ないのだけれど。  子供の頃、雷が鳴るといつもこの窓から泉の部屋へ行っていた。泉はいつもベッドで布団を頭から被っていて、その様子がとても可愛くて。俺が手を伸ばして布団に触れれば、その小さな体が面白いほどに跳ねた。ずっと布団の中で耳を塞いでいたんだろう。 『なに、泉。雷、怖いの?』 『――っっ。怖くなんかっっ』  そのくせ俺が面白半分にからかうといつも、泉は精一杯強がってみせた。  本当は怖いくせに怖くないと言い、平然を装って布団から這い出てくる泉。雷が鳴るたび涙目で体をびくつかせるくせに、俺の前でだけは強がってみせる。 『なんだ。心配して損した。泉が怖がってると思って来たのに』 『……大きなお世話だ』  真っ赤な顔でそっぽを向くから、俺の中で悪戯心が沸き上がる。 『あっそ。じゃ、さいなら』 『――っっ。ちょ、壱人っ』 『……ん?』  腰掛けたベッドから立ち上がった瞬間に腕を引かれ、俺を見上げて来る泉の涙目は言葉に出来ないくらい、とにかくやばかったんだよな。  雨が降るたび思い出すあの頃。子供の頃は雨が降るのが待ち遠しかった。わざと傘を忘れて学校に行き、泉と相合い傘で帰宅。雷が鳴れば泉の部屋を奇襲する。  隣同士であることをいいことに、事あるごとに泉に構っていたっけ。今はさすがに雷ごときではベッドには引きこもらないだろうけど、雨が降るたびにあの頃のことを思い出す。

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