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05
壱人と壱人の元カノ、そして俺。俺は一応、壱人の今の恋人だけど、傍目には単なる壱人の幼なじみに見られているんだろう。
だからこそ学校でも壱人と一緒にいられるんだけど、少し淋しく感じるのも事実。壱人が俺の目の前で手紙を渡されたり告られたりするのも日常茶飯事 で、悲しいかなその状況にもすっかり慣れてしまった。
俺の目の前で手紙を突き返したり、付き合ってくださいな申し出を断ったり、瞬時に一刀両断する壱人を見て告ってきた女の子を気の毒に思うこともある。
もしも壱人に恋人がいることが分かったら、少なくとも壱人に告白してフラれる女の子も減ることになる。それもあって俺が壱人の恋人だって声を大にして言いたいけど、言えないことがまた悲しかった。
「……どうしたの。泉ちん?」
あ。いかんいかん。つい。
「ん。いや、よく喋るなって思って」
俺は笑ってごまかした。
今でもたまにこんな風にナーバスになる時がある。今は壱人と付き合い始め、こんなにも幸せで楽しい毎日を送っているのに。
その時、真ん中の結木さんを越えて伸びてきた壱人の手が俺の後頭部を撫でた。後ろ髪に指を絡めて、優しいけど少し乱暴にグシャグシャって。
ああ、やばい。この手には弱い。大事にされているのが分かるから、なぜだか泣きたくなる。
再び笑顔が戻った結木さんにホッとして、結木さんを挟んだ後ろで壱人と手を繋いだ。勿論、後ろに誰もいないことを確かめて。
自信を持っていいんだって壱人に言われているようで、まあ、実際にいつも言われてるんだけど。けど、影が薄いのは相変わらずだから、たまにちょっとだけこうなるのは許して欲しい。
南高校前のバス停からは都心に向けて直通バスが出ていて、結木さんたち利用者は都心から電車に乗り換えて帰宅する生徒が大半だ。
「あれ、お揃いで」
到着したバス停でそんな声が聞こえてよく目を懲 らすと、今一番会いたくないやつらがこちらに視線を向けて笑っていた。
「あれ、おまえらもバス?」
「なんだよ今更。前からそうだっつの」
思わず壱人と結木さんの後ろに隠れてしまう。いや、恐らくばれることはないんだろうけど。
「それよりおまえら復活したの?」
「まさか。新見くんにはあんな可愛い彼女がいるのに」
「なに。結木も知ってんの?」
「もちろん」
「なんだ。単なる浮気か」
「だから違うっての」
えーと、結木さん。余計なことは言わないように。その彼女ってば、女装した俺なんだから。
二人は女装した俺の画像を見て、すっかりそれが壱人の彼女だと思い込んでいる。
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