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06
「確かに可愛いよなあ。壱人の彼女」
そう言いつつ金髪に近い色の前髪を弄ってるのが水上 で、水上はファッション雑誌の読者モデルをやっている。少しチャラチャラして見える今風のイケメンで、壱人と同じぐらい女子にモテる男だ。
「そうそう。普通っぽいところがまた……」
そう言う村上 はどちらかと言えば女顔の美形で、イケメンというよりは美人という言葉が似合う。村上はバンドをやっているらしく、一部の女子にカリスマ的な人気があるミステリアスな男だ。
少し長めの黒髪を無造作に流し、黒縁眼鏡を掛けている。その眼鏡は伊達眼鏡で、変装の意味もあるみたいだけどその意味を成してはいない。
水上と村上は壱人のクラスメートで、俺と付き合うようになってから壱人とつるむようになったやつらだ。イケメンのところにはどうやらイケメンが集まるようで、新見、水上、村上と言えば、南校の(モテる男の)トップ3と言われている。
それにしてもこの状況はなんなんだと心の中で苦笑い、思わず踵を返しそうになった。美男美女に囲まれるフツメンとか。なんともやり切れなくなるんですけど。
そんなことをうだうだ考えていたら、
「あー、えっと。米倉だっけ」
「は、はいっ!」
いきなり話をこちらに振られて、思わず小学生のような良いお返事をしてしまった。
「…………」
瞬間、まるで時間が止まってしまったような気がした。
うわー、やっちゃったよ。二人とも同じクラスになったことないし、いきなりイケメンに話し掛けられたから緊張したっつーかなんつーか。
余裕の結木さんはなんかクスクス笑ってるし、壱人は何故か俺の腕を引いて自分の背中に隠そうとする。
「……ぶっ。なんだよ。面白いやつ」
どうやら笑い上戸らしい水上はケタケタ笑って、
「壱人の幼なじみだっけ。話すのは初めてだな。よろしく」
右手をこちらに差し出して来た。
そんななんとも落ち着かない状況はバスが来るまで続き、
「じゃあな」
「また明日ね」
三人を乗せたバスを見送り、思わず大きな溜め息を一つ。何故だかずっと不機嫌だった壱人も大きな溜め息を一つつくと、突然俺の額にデコピンして来た。
「なにすんだよ!」
「俺以外の男に笑い掛けるなっつの」
「はあ?!、わけ分かんね……」
それからどさくさに紛れてそこにキスして来ようとするから、思わずそのまま頭突きで返したのだった。
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