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コスプレや同人誌即売会なんかのイベント、創作サイトのオフ会なんかで知り合った腐女子のオフ友は何人かいるんだけど。他にもインターネット上だけで、つまりはメールのやり取りやチャットだけで交流しているベーコンレタス好きな腐女子も何人かいるけど、未だかつて萌えの対象となる同性の男、つまりは腐男子には遭遇したことがないんだよな。多分、俺と同じように必死に隠してるだけで、全くいないはずはないと思うんだけど。
きっかけは俺の場合はオタクな姉ちゃんだったけど、今はBLって一般的に知れ渡ってきてるし。俺みたいに腐女子の姉ちゃんがいたり、母親が腐女子の結木さんみたいなきっかけでハマった男もきっといるはずだ。
いわゆる腐男子ってやつだけど、そいつと一度話をしてみたかった。なんちゅーか……、どうやら俺は萌えるポイントが女子とは少し違うようで、腐女子とは微妙なずれを感じてて。
姉ちゃんとか結木さんと話してたらいつも思うんだけど、腐女子って受けが「俺が守る」って攻めに言われるのに萌えていて。なんというか、やっぱりそれって女の子の視点から見てるんだよな。
腐男子の俺とかは、ちょっとした友情だとか攻めがちらりと弱い部分を見せたりするのに萌えるんだけど。あと、エッチの後に受けが「責任取れよな」ってツンデレるとことか。
何と言うか腐男子代表の俺は女の子たちみたいに無理矢理なシチュエーションは萌えないし、ほんと男女では微妙に萌えポイントが違う。だからきっと同性の腐男子とそこら辺を話してみたら、意気投合すると思うんだ。まあ、別に探してまで話してみたいと言うわけでもないんだけどさ。
「おい、こら。泉」
「え、あ、なに……、ってごめん」
気付けば壱人と二人になっていて、おまけに自分ちの前に着いていた。
ああ、やばい。思わず自分の世界に浸っちゃったよ。壱人のやつ眉間にシワを寄せてるし、こりゃあ相当機嫌も悪いよな。案の定、どうやら最悪なようで、
「泉。今日は2ラウンド戦な。今夜覚悟しとけよ」
そう言って隣家に入って行った。
まずいことになったなあと、思わず溜め息を一つ。
「ただいまー」
玄関先で声を張り上げると、
「おかえり」
いつものように、母さんがスリッパをパタパタさせながら出迎えてくれた。
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