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イケメンズといっしょ  どうやら太陽だけじゃなく、俺の周りも負けないぐらいに眩しいらしい。 「――――」 「201号室ね。ありがとう」  橋本も俺と同じように爽やかな笑顔を受付にまで振り撒く美男美女に気遅れしているようで、必要以上に受付のお兄さんに頭を下げ、二人して美男美女のあとを追う。 「……そう言えばおまえ部活は?」 「肩が痛むからって休部届け出してきたっつの」  こんな機会、滅多にあるもんじゃないからなと笑う顔が少し強張(こわば)り気味の橋本と二人、ひそひそと小声で話しながら。  正直、壱人と二人で待ち合わせ場所でもあるこのカラオケ店の前まで来た瞬間に、早くも引き返したくなった。結木さんと水上と村上の三人が談笑している後ろに橋本の姿を見つけなきゃ、引き返していたかも知れない。 「よう」 「やっと来たか」 「……あ、ども」  イケメンたちは私服姿もお洒落で、面食らってしまった。さすがは人気雑誌の読モと人気バンドのボーカルらしく、それぞれに特徴のあるお洒落をしている。  壱人と結木さんの私服は見慣れてるけど、これもお洒落だし、意外なことに橋本も有名スポーツメーカーのジャージと黒のデニムで爽やかに決めていた。それに比べて俺はと言えば、パーカーとシャツの重ね着に穿き古したデニムのいつもの格好だ。 「201号室だってさ」  エレベーターに乗って二階へと上がるわずかな時間も、なんかすごく息苦しくて。 「ねえ、泉ちん」 「え、あっ。な、なに?!」  結木さんの呼ぶ声に思わず上擦った声で返事をしてしまった俺は、移動する狭い密室の中でみんなの失笑をかってしまった。  201号室は二階の一番奥の部屋で、部屋へと向かう道すがら擦れ違う女子高生や女子中学生たちは必ず俺たちを二度見していく。擦れ違った後に誰がかっこいいとかキャーキャーやってるのを聞いていると、なんともいたたまれなくなってくる。 「泉、どうした?」 「……あ、と。なんでもないよ」  当然のように俺と橋本がキャーキャー言われることはなく、水上と村上に挟まれた壱人が思い出したかのように声をかけてくるけど、壱人にも引き攣った笑顔しか向けることができなかったのだった。

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