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移動すること数分、
「へえ、案外綺麗なとこじゃん」
「久しぶりだな。カラオケ」
「だろうな。村上はバンドで歌ってるから、わざわざカラオケなんかしないだろうし」
201号室はわりとこじんまりとした部屋で、着いた早々に村上はカラオケの機械を弄りだした。おそらくはエコーの効き具合や音量を調整してるんだろう。あちこちのつまみを回し、マイクを叩きながら聞き耳を立てている。
結木さんは空調をちょこちょこやってるし、なんと言うか本当にみんながみんなマイペースで個性的なやつばかりだ。壱人はメニュー表を片手に受話器を取ると、いくつかの料理や飲み物を適当に注文していった。
俺と橋本は出入口のドアに一番近い席に並んで座り、俺の反対側の隣は壱人が陣取った。俺の真正面に陣取ったのが結木さんで、結木さんを挟むようにイケメン二人が結木さんを交えて談笑している。
特筆すべきは見た目はチャラく見えるこのメンバーは、意外にも誰一人として酒も煙草もやらないということだ。俺とぎりぎり橋本以外はみんな大人っぽくて、見た目には成人だと言っても通じるのに。村上が唯一バンドマンとしてお酒も提供するライブハウスに出入りしているぐらいで、全員が飲み会やコンパには無縁なやつらばかりだ。
「あ。そういや水上。例のモデルの女どうした?」
「んー、一回寝たけどなんかしっくりこなくてさ。三日で別れた」
と言うのも全員が半端なくモテるからで、今までの壱人や水上、結木さんはいつも二人きりで遊ぶお相手、つまりは恋人がいた。
村上はバンドが忙しくてコンパだとかをする暇がないらしく、どうやらモテすぎると恋人とマンツーマンの濃い付き合いになるからか、コンパや飲み会で羽目を外すことはなくなるらしい。
「じゃあ、私から歌っていい?」
結木さんはそう言って烏龍茶に手を伸ばし、他のメンバーもコーラやらジンジャーエールやら壱人が適当に注文したソフトドリンクのグラスに手を伸ばした。大皿に盛られた唐揚げやらポテトをつまみながら、ある者は歌う曲を選曲して、ある者は隣のやつと談笑している。
「…………」
俺はと言えばどうしてもその場に馴染めなくて、借りてきた猫のようにがちがちに固まってしまっていた。カラオケ自体はもちろん初めてじゃないけど、こんな美形集団の中に放り出されたら誰だってこうなるに決まっている。
なんとなく橋本を見遣れば橋本も俺と同じようなもので、空 になったコーラのグラスの中身をストローで派手な音を立てながらいつまでも啜 っている。
「なあ、米倉」
そしたら斜め前からいきなりそうふられて、
「えっ、俺?!」
思わずでかい声を出してしまった。
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