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結局はそれなりに楽しめたのかどうだかの微妙なカラオケ大会は終わり、それぞれ別々に帰路に着いた。
「あいつら、泉が待ち受けの彼女だって気付かなかったな」
呑気にそんなことを言って笑う壱人に背後から跳び蹴りを食らわせて、部屋から閉め出したのはその日の夜のこと。どうやら壱人は俺の女装のクオリティーがどれくらいなのかが知りたかっただけのようで、水上や村上に俺が笑い掛けられたら間に割って入ってきたりもしたくせに呑気に完璧だなんて笑っている。
壱人いわく、これなら誰の目も気にせずに普通に手を繋いでデートができるレベルらしく。まあ、それに関しては俺も文句は言わない。ただそれを確かめるためだけに俺を駆り出したんだとしたら、それに関しては実験台にされたみたいで気に食わなかった。
秋深し。隣は何をする人ぞ。
「はあ……。やっぱり俺はおまえといるのが一番だな」
「な、なんだよ。急に」
「うん。あいつらといても役不足ってゆーかさ……」
「はあ?!」
あれから数日が過ぎ、平和な日常が戻ってきた。中間テストの結果がどうだったかは取りあえず置いておいて、波風が立たない毎日を送っている。
間近に控えた学園祭の準備も始まり、ロングホームルームの時間を割いて催し物や例のコンテストの代表なんかが話し合われることになってはいるが、俺は自分には関係がないと高 を括 っていた。
村上と水上のイケメンコンビとカラオケに一緒に行ったからって特別仲良くなるようなこともなく、相変わらず二人とは廊下で顔を合わせても挨拶するだけの関係は続いている。別に二人が嫌いだとか苦手だとかの次元じゃなく、やっぱりどう考えてみても会話が盛り上がるような共通の話題がない。
立ち話で壱人のことを話すにしても、突っ込んだ話になるのが怖くて適当にはぐらかしてしまうし。このままそんな関係で終わるんだろうなと、呑気な考えでうつぶせた机。頭の上。
「んふふー」
「な、なんだよっっ」
「……動揺してるでしょ?」
「だ、誰がっっ」
いつものようにステレオで、橋本と結木さんのトークバトルが始まった。
どうやら今年の俺のクラスの出し物はお化け屋敷に決まりそうで、ホッと胸を撫で下ろす。第一候補はクラスの女子の大半がイチ押しの男女逆転でのメイド&執事喫茶なんだけど、隣の壱人のクラスも同じらしく、その情報が入った瞬間に却下されたのだ。
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