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 それに何よりうちのクラスの美形と言えば結木さんと微妙なイケメンの橋本ぐらいなものだけど、壱人のクラスは壱人と水上のような女装は微妙な男前タイプのイケメンは除外するにしても、村上のように絶世の美女に化けそうな逸材もいる。 「結木。おまえなあ……」 「なによ」  隣り合う教室で同じ催し物をしてもD組に客足を取られるのは目に見えていて、いくらやりたいからってメイド&執事喫茶を推している女子たちもゴリ推しはできないはずだ。だからここは無難にお化け屋敷に決まるはずで……、って、 「なんだよっ」 「なによっ」 「あーもうっ、うっせっ!」  耳を塞ぐいつものイヤホンを忘れてきた俺は、あまりの(かしま)しさに()を上げてしまったのだった。  俺が音を上げたついでに頭と大声を上げても、聞こえているのかいないのか、目の前の二人は睨み合ったまま微動だにしない。 「……っ、とに。仲がいいんだか悪いんだか」  そうぼそりと呟くように俺が口にした瞬間、橋本の肩がぴくりと小さく跳ねた。俺、橋本は結木さんを好きってか、結木さんのことを気に入ってると思うんだけどな。誰にでもいい意味で調子いい橋本は女子にもいい顔をしていて、下の名前に『ちゃん』付けをしたりとぬかりがない。  そんな中、結木さんとは本音でやり合っている気がして見てるこっちは気持ちがいいんだよな。 「「仲良くなんかないわ!」」  微妙に言い回しとイントネーションが違うけど全く同じ台詞が二人の口から飛び出して、一瞬、二人とも目が点になったと思ったら、 「……ぶっ。あ、あははっ!」  ベーコンレタス以外の話題では、いつも冷静でクールな結木さんが腹を抱えて笑いだした。  結木さんの笑いはまさに大爆笑で、体を『く』の字に折り曲げ、 「ああ可笑(おか)しい」  腹筋、それから全身を使って体全体で笑っている。ぐしゃぐしゃに破顔しても可愛いつーか綺麗なのは美人ならではなのか、思わずその笑顔に見惚れてしまった。  どうやらそれは橋本も同じだったようで、 「……なに見てんのよ」  その声で我に返った橋本は、 「べっ、別に」  結木さんから視線を外して頭を掻きながら、 「じゃ、じゃあな」  そう言うと、また教室から出て行ってしまった。

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