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「……なによ。変なやつ」  今まで頭上でどんなバトルが繰り広げられていたか分からないけど、もしかして二人はとてつもなくいい感じなんじゃないのだろうか。 「……なによ」 「あ、いや。別に」  そんな下世話なことを考えていたら、さっきのが俺にまで飛び火した。  こうやって改めて見ると、結木さんは頭の先から指の先まで見紛(みまが)うことなき美少女だ。橋本がいなくなってつまらながっているところなんかは本当に普通の女の子で、改めて女の子が無条件で可愛いということを実感する。 「……まあいいや。ね、泉ちん。そう言えば私が好きなBLサイトがさ」  ……これさえなきゃ、かな。  そんなこんなで今日もいつもと変わらない平凡な一日で、平穏すぎる学校での時間は過ぎる。クラスでの俺のスタンスも普通一般的な一生徒に戻り、壱人は他校生の彼女ができたということに落ち着いた。 「泉、帰るぞ」 「あ、うん。ちょっと待って」  俺が壱人の幼なじみで家が隣り同士なのもクラス中に知られたし、俺と結木さんの仲もただのクラスメートだってこともクラス中に知れ渡ったのだった。 「橋本、部活か。がんばれよ」 「おお。さんきゅ」  こないだのカラオケのお陰か壱人と橋本の関係も良好で、またこないだみたいに美男美女に囲まれるようなことがない限り、俺が注目されることもないだろう。 「壱人、お待たせ」 「ん」  俺が壱人の隣に立つことも当たり前になってきて、今は不躾(ぶしつけ)にジロジロ見られるようなこともない。帰り道で俺たちと擦れ違った後に女の子が振り返ることは相変わらずだけど、それでどうこういった複雑な思いもなくなった。  端から見れば、俺たちは仲の良い友達同士に見られているんだろう。そう思ったら笑えるぐらいに心に余裕も出てきたし、このままあのイケメンたちとも同じようなスタンスのままで……、なんて。  この時の俺は呑気にそう思っていた。それが大きな間違いだってことに気付くのに、それほど時間は掛からなかったのだった。

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