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 壱人と馬鹿話をしながら、いつものように帰路を辿る。俺らの家がある住宅街から学校まではほぼ一本道で、寄り道するなら近くの商店街か、村上や結木さんが乗っているバスで駅方面へ向かうしかない。 「そしたらあいつがさ」  距離にして徒歩で10分あまり。壱人と付き合っていた頃の結木さんは、一度学校に着いてから毎日わざわざ壱人を向かえに来ていた。  それから二人で談笑しながら登校していたのが毎朝の日課で、それほどまで俺らの通学路は学校から程近い上に寄り道する場所もない。 「へえ。それ、橋本もたまにやるな」  まあ、付き合い始めたと言っても元々が隣同士の幼なじみなんだから、お互いの家と言うか部屋を行き来するのが俺たちのデートのようなものだ。それは壱人と気まずくなる前の俺たちの日常でもあって、恋人同士の今も付き合い始める前とあまり変わらなかったりする。 「いや、橋本はいいから。それよりさ……」  ただ、単なる幼なじみだった頃とは根本的に違うことは、単なる幼なじみではしないことをするようになったことだ。それは言わなくてもわかるだろうけど、俺たちは一般的な恋人たちがやってることは一通りしっかりやっている。 「ふうん。そういや橋本がさ……」  帰る道すがらそんなことを考えながら馬鹿話をしていたら、 「…………」  壱人が急に立ち止まって黙り込んだ。  さっきまで順調に会話も弾んでいたのに、それまでの和やかなムードも一変する。 「……ぶっ!」 「…………」 「な、壱人。おまっ」  急に立ち止まった壱人に気付かなかった俺は、壱人の背中にぶつかってしまった。 (思いっきし顔面から突っ込んだし! 低い鼻がますます低くなったらどう責任をとってくれんだよ!)  心の中で独りごちながら壱人を軽く見上げて睨んだら、壱人も同じように俺を冷ややかな視線で見下ろしてくる。 「なっ、なんだよっ」  なんで見下ろされた上にそんな目で見られているのか分からなくて、思わずひるんでしまう俺。壱人は軽く俺を一瞥(いちべつ)し、わざとらしい溜め息をつくとくるりと背を向け行ってしまった。

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