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 よく考えてみれば、ちゃんと電話には出ろって、一聴すれば命令口調にも聞こえる壱人のこの台詞も至極当たり前のことだ。  結局、壱人は俺のついた結木さんといたって嘘を信じてくれて、水上と会っていたって小さな秘密がとてつもなく大きな秘密であるかのようになってしまった。 「泉。自分で脱いで」  考えてみれば、離れていた期間を除けば、俺たちに隠し事なんかなかった。子供の頃に共有していた秘密ならいくつかあるが、そう考えてみるとなんとも後ろめたくなってくる。 「……ん」  だからって、ちょっと素直すぎっていうか、従順すぎる気もするけど。いつもはこっ恥ずかしくてやれないようなことも、壱人の言うことは全て聞いてやった。 「……やっ」  壱人はいろんな意味で鋭いから、俺のそんなちょっとした変化にも気づいていると思う。だから尚更、普段通りにしてはいられなかった。  結局、その夜はいつも以上に壱人に泣かされて、壱人が自分の部屋に戻ったのは日付が変わろうとしている、まさにその時。シンデレラタイムと同時に俺の体中にキスマークを残して行った壱人は、どうやらいつも以上に満足してくれたらしかった。 「くそっ、壱人のやつ……」  それにしても、俺がなんでも素直に聞いてやってるからって調子に乗りやがって。 「あっ、イタタ……」  いつもは絶対にやらない体位……、じゃなくてとらないポーズをとらされて、足は()るわ、体の節々が痛むわで散々な目にあってしまった。  特に腰ら辺と股関節が。まあ、さ。めちゃくちゃよかったけど。  単純な俺は、これでこの件は終わったものだと思っていた。それが大きな間違いであることに気づくのは、まだまだ先のことだ。おめでたい俺はこの日、いつも以上にぐっすりと安らかな眠りについた。

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