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 昼休みはいつも結木さんと教室で弁当を食べてるんだけど、毎週金曜日は結木さんも一緒に壱人と三人で屋上で過ごしている。今日は壱人と二人だから盛って来ないか心配だったんだけど、どうやらそれはいらない心配だったようだ。 「泉、携帯が鳴ってるぞ」 「あっ、うん」 「確認しねーの?」  自分でメッセージを送っときながらそう言って、水上はニヤニヤ笑っている。 「あー、えーと。たぶん、利用アプリの通知かなんかだと思う。いろいろくるし」  苦し紛れにそう言ってごまかすと、あろうことかやつはぶはっと盛大に吹き出しやがった。 「くくっ。米倉、突っ立ってないでここに座れば?」 「う、うん」  友達というか、メッセージをやり取りするようになって気付いたこと。イケメン水上は案外、意地が悪い。やつはこう見えて悪戯好きで、壱人にばれたら自分もまずいくせに、よくこんな子供じみた悪戯を仕掛けてきたりする。  水上とは毎日、夜、寝る前にLINEしたり直接電話したりしてるけど、壱人と一緒の時や学校ではまずいっての。それを一番知ってるくせに、本当に水上は(たち)が悪い。  その隣に座っている村上とばっちり目が合ったから、 「あ、ども」  ちょっとぶっきらぼうになってしまったけど、一応、挨拶してみた。 「ん」  村上はにっこりと綺麗に笑うと俺から目を逸らし、視線を空中に泳がせる。青空とグラウンドの中間というか、地平線辺りというか。 とにかく、どこを見てるのかわからないその視線の先に、何があるのかとても気になった。  男にしては少し長すぎるストレートの黒髪と、トレードマークにもなっている黒いフレームの眼鏡。その伊達眼鏡を本人はどうやら変装のつもりでかけているみたいだけど、結木さんにも劣らない美形の村上にはファッションアイテムの一つになってしまっている。  普段から無口な村上とはあまり話したこともなくて、廊下で会ってもいつもにっこりと綺麗な笑顔を向けられるだけだ。とにかく、村上は行動から何からがミステリアスで、掴みどころがない。 「泉、ごめんな。こいつらがどうしてもって」 「あ、うん。全く問題ないよ」  むしろ大歓迎。壱人のバカが暴走するのを防げるし。  どうやら三人は間近に迫った学園祭についての話もあるようで、顔を突き合わせてすぐにやいやいやりだした。  聞き耳をたててみると俺には全く関係ないコンテストのことで揉めてるようで、特に壱人と水上がやいやいやっている。裏コンの女装部門は村上が出場するとして、表のクラス代表を壱人にするか水上にするかで揉めているらしく、二人がそれをお互いになすりつけ合っている形だ。

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