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 そんな三人をぼんやり眺めながら、弁当を広げて卵焼きに食いついた。母さんが作ってくれるそれは砂糖味の甘いやつで、俺も好きだけど実は壱人好みの味付けだったりする。 「やだよ。めんどくせえ」 「俺だってやだっつの」  そんな事実もあり、金曜日に壱人とお昼を一緒に食べてることを母さんが知っているからか、金曜日は弁当に入っている卵焼きが少しだけ増量するんだよな。  のんびり昼食を食べてる俺と村上とは裏腹に、二人の用意したものは全く減っていない。何しろ学年のビッグ3がD組に集まってるんだから『そりゃあ悩むわな』なんて、人ごとでいられる俺のクラスは、なんと橋本が表の代表で結木さんは裏コンでもある男装コンテストの代表に決まった。  それは、うちのクラスにはイケメンと言えば橋本しかいないからで、表のミスコンは可愛くて女の子らしい田辺さんに決まったからだ。某歌劇団の男役をつとめてもおかしくない美人の結木さんとは違って、彼女はミスコンにしか向かないし。 「読モの経験を()かしておまえがやれよ」 「関係ないっつの」  それより何より問題は男子の裏コンで、つまりは女装コンテストの代表がまだ決まってなかったりする。うちのクラスには村上のような美人と呼べるような男子はいないし、橋本に次ぐそれなりに美形なやつらのなかにも、女装が似合いそうなやつはいない。そう考えれば村上は本当に特別な存在なんだろう。  だから、さ。実は結木さんが女顔を理由に、俺を推して来ないかって心配してたんだけど。どうやらそれはいらない心配だったみたいで、結局は決まらないまま、次の話し合いに持ち越された。  それにしても、今日がいい天気で本当によかった。日に日に涼しくなっていくなか、今日みたいな日の屋上はとても気持ちがいい。 「あ」  そうこうしてるうちに昼休み終了のチャイムが鳴り、 「それじゃ、お先に」  二人のバトルはまだ終わらないようで、D組の面々を放っておいて教室に戻る。  実はこのあとの5時限目はロングホームルームで、まだ決まっていない裏コン男子の代表を決めることになっている。うちのクラスがD組に敵うわけはないんだから、おそらくは笑いを取りにいく作戦に出ることになるだろう。  この時の俺は、呑気にそんなことを考えていた。そんな自分の身に、人生最大のピンチが訪れようとは思いもせず。

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