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06
「……」
「ん? どうした、米倉」
……やっぱり。
「え、うそ。泉ちん、当たりくじ引いちゃったの?!」
広げた紙面一面に、でかでかと『あたり』の文字。子供のように可愛いひらがな文字のくせに、ご丁寧にも裏から透けないように鉛筆で薄く薄く書かれている。
ほんっと、このくじ運のなさには泣けてくるよ。当たって欲しい時には全く当たらないっつーのに。
「なんと言うか……」
「……うん」
俺の両側から俺が引いたくじを覗き込んだ結木さんと橋本が、顔を見合わせてぷっと吹き出した。
「……ぶっ、わははは!」
「笑うなっ」
「や、ごめん。だって……」
あー、もう。だから嫌だったんだ。くじ引きなんか。
「当たり引いたの誰? 米倉くん?」
じゃあ米倉くんに決定ねと言いながら、三橋さんは俺の名前を黒板の代表者の欄にでかでかと書いた。
ああ、くそっ。なんで嫌な予感っていうものは、こんなに簡単に当たってしまうんだろ。クラスのほぼ全員に頑張れよって激励されたけど、みんながみんな人ごと感丸出しで笑っている。
男子に至っては、
「米倉が代表? 米倉、女顔してるから案外いけるんじゃね?」
なんて呑気に笑ってるし。女子からは泉ちゃんなんて、全く有り難くないあだ名をもらってしまった。今まで下の名前で呼ばれることなんかなかったのに。結木さん以外に。
少なからず結木さんが俺のことを泉ちんって呼んでいるのが影響したのかしないのか。ともかく、そんななんともおかしな状況になってしまったのだった。
そんな最悪な状況だけど、女装メイクの担当が結木さんじゃないってとこだけは不幸中の幸いってとこかな。
結木さんはお化け役のみんなのヘアメイクと着付け、自分の裏コン準備で忙しいからと女装メイクのほうは辞退した。多分、やりたくてうずうずしてただろうけど。
でも、結木さんにメイクしてもらったら万が一にもばれないとも限らないし。
自分から進んでやっていないとは言え、俺が女装メイクしている時のメイクは結木さん直伝だ。姉ちゃんのメイクとはまた違うけど、結木さんにメイクしてもらうのはまずい。
結局メイクは言い出しっぺの女子が担当することになったけど、それはそれで一抹の不安があったりして。
彼女のばっちりメイクは結木さんのより遥かに濃くて、所謂ギャル系の彼女にメイクしてもらう、そう考えるだけで軽い目眩がした。
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