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第11話
「トーヤ、お前の」
「あ、ありがとっ…いただきます」
串に刺さった肉を渡され、ゴクリと喉が鳴る
口の中が涎でいっぱいだ…
恐る恐る串の先に刺さった肉を口に含む
硬い。パサパサ…肉っていうか、獣の味…
昔食べた美味しくない羊の肉を彷彿とさせる
空腹は何よりのスパイスって言うけど、全然ダメだ…空腹ですら出来れば食べたくないレベル
餓死寸前なら食べるかも…
あんなに良い香りさせておいて、なんて罪な肉だろうか
「ところでトウヤ、質問があるのですが」
「な、なんでしょうっ」
手渡された肉の串を全部食べないといけないのか…流石に残すのもな…とうんざりしていると、俺の右隣に来たロワンが俺の顔を覗き込んだ。
揺れる金髪と、下から覗き上げる赤い瞳全てが美しくて、思わず言葉に詰まってしまう。
質問があるらしい。何だろう
この世界の事何にも知らないから答えられるだろうか?
「貴方は異世界から来たのですか?」
「えっ?!なんで…それを!!!!」
「やはり…」
「やっぱり、だな」
思わぬ質問に、肯定と取れる返事をしてしまい、少ししまった…と思ったがもう遅い。
驚く俺を他所に、ロワンとアルドがうんうんと頷く
どういう事だろう?ていうかなぜ分かってしまったのか
不思議で不思議で仕方がない
俺がよっぽど不思議そうな顔をしていたのか、ロワンが俺を見てふふふ、と笑った
「先程少し、アルドと話ましてね。
彼は今朝の時点で1つの可能性として考えていたみたいですが…」
「まあ空間魔法をスキルって言われて、ほぼ確信したけどな」
えっ、それって結構早い段階で気づいていたって事…なのだろうか??その話したの今朝だよね?あのスライムブルーとかいうダサい名前の泉があった場所でだよね?
「私は血を頂いて、もしやと思い…スキル持ちは滅多に居ませんからね
まあ、癪ですが2人の意見が一致したので。」
「トーヤ、お前は異世界間から来たって事で違いねえな?」
少しばかり真剣な眼差しでアルドがこちらを見た
こ、これは認めて良いのだろうか?
認めた途端斬り殺されたりしないよね?大丈夫?
恐る恐るコクリ、と頷くとロワンはとても嬉しそうに笑い、アルドもニヤリと笑った
大丈夫…そう?
「それなら何も知らないでしょう?私たちのことも説明しないといけませんね」
「このクソ吸血鬼はな、血を吸って体力と魔力回復しやがんだよ」
「ほんの少し頂いた貴方の血で全回復です!それにとっても美味しい…」
ロワンがうっとりと目を細めて舌なめずりをし、ゾワリと悪寒が走る
ほ、捕食者の目だ…
だがそのロワンの表情はすぐに冷酷な笑みへと変わり、背中から真っ黒なオーラが見えなくもない。その視線の先にはアルドの姿
「ああ、そこの下等生物の鬼は性魔力というものがお好きな下品な方です」
「せいまりょく…?」
「ええ、主に男女が身体を重ねた時に、自然と空気に溶け出す魔力の事です」
「…はあ、?」
「性行為をすると性魔力というものがその周辺に充満するんです。鬼…だけでなく、下等なモンスターはこれが好きですね」
下等、下等と、大事な部分と言わんばかりにその部分を強調して言うロワン
アルドにクソ吸血鬼といわれた事を怒ってるのだろう。多分
ロワンが言うには、鬼を含む幾つかの魔物やモンスターは性魔力が好きならしい
魔物とは人の形をしているが人間では無い者の事。ロワンやアルドと言った人型をしている者が魔物と呼ばれ、人型ではない物がモンスターに分類されるそうだ
そして性魔力が好きな魔物やモンスターは、基本人間の雌を狙う。と
何でもこの性魔力というものは人間からしか出ないようで、魔物やモンスターからは生み出されないそうだ
うん。俺男だけど?
ごく稀に知性の低いモンスターが雄も襲う…と聞き、アルドへと視線を移す
知性の低い……あ、ちがう、アルドは魔物だ
「おいこら、何見てんだ犯すぞ」
知性の低いモンスターだ。
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