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第13話
そういえば、ロワンのステータスに所持金の表示はなかったな…
え?もしかして、ロワンってこう見えて無一文??
「あのえっと…ロワンはお金…持ってないの?」
「??持ってますよ、ほら」
と、まるでマジシャンのように、どこから紙を1枚だした。紙幣だろうか
あれ?お金持ってるの?ロワンのステータスに所持金の表示はなかったけど…
俺の方が特殊なだけ?
そう思い、俺のステータス画面少し変だもんな…触れるし。と所持金の所をタッチしてみた。
うん。やっぱり俺のステータス画面が他と違うだけだった
新しく開かれたウィンドウには、チャージしますか?の文字
チラリ、とロワンの手の中の紙を見れば、意思を汲み取ってくれたのか、ニコリとその紙をくれた。
新しく開かれたウィンドウの、YESの文字をタッチすると、ロワンに貰った紙が一瞬で消え
10000Gチャージ、の文字
いちまん…まじか
え、待って、これどうやって戻すの?入れたのに出す方法は書いてないんだけど…!!
え、どうしよう。ロワンの10000G
「えっと…出し方分からないです…どうしよう…ごめんなさい」
「ふふ、それくらい構いませんよ。
異世界からやってくると仕様が違うとは耳にしましたが、まさかこんな感じとは…」
「えっ、異世界からよく人来るの?!」
「よく…かは分かりませんが。100年に1度くらいは話題になりますね」
思い掛けない言葉に、思わず前のめりでロワンへと問いかけてしまった。
少し驚いたロワンはそれでも優しくゆっくりと説明してくれる。
この世界は、稀に異世界から人が来る事があり、その大半は人間として転生してくると。
そして、特殊なスキルを持っていたり、ステータスが異常に高かったりする為、国から追われる者、国へ仕える者、と二分化するそうだ。
この場合の国とは、人間国家のみ、魔国では異世界人は珍しい者…との認識はあるが、追いかけ回すほどのものではないらしい。
異世界人が来るのは、知られている限りでは約100年に一度の周期
これは全国共通で有名な話しで、前回の転生者からそろそろ100年経つ…とここ数年は話題になっていたそう。
そう言った話もあって、出会って直ぐに俺が異世界人では?という考えが浮かんだのだと言う
100年かあ
100年…次誰か来る時、俺は死んでるな。
でもロワンにしたら、俺は異世界人5人目…とかなのかもしれない。魔族の寿命ってどうなってるんだろう…
あとこれ以上色んな人に異世界人ってバレたくないな…すごく、面倒臭そう。
「…平和に暮らしたい」
「そうですね、異世界から来たと分かると色々大変な目には遭うでしょうね…」
最初に出会ったのが魔族だった事はもしかすると、とても幸運だったのかもしれない。
異世界に来てすぐ、何処かの国へ取り込まれる事は回避できたのだから
「次はノギノ商店について教えてもらえますか?」
うーーん。教えちゃって良いのだろうか?
どうなんだろう??
ていうか、教えるの…説明するの凄い難しい面倒臭い
「見てもらえれば、早いかも」
問題が起こったら後で考えよう、とお馴染みのノギノ商店のページを開いた
画面に映し出される商品達
首を傾げるロワン。そうだよね、見慣れない物ばかりだろう。きっと
お腹空いてるし…と思いメロンパンを購入した
さっきのお肉の口直しもしたい。
そして次にアイテムボックスを開いて、暗黒世界へと手を突っ込む
メロンパン、メロンパン…と強く思いながら、手に触れたビニールを引っ張り出した
「…えっと、分かりました??」
どうだろう?むりかな?
チラリ、とロワンを伺えば少し怪訝な顔
ですよね、ですよね!
そうなるよね!
俺もよくわかってないの!このシステム!
「この、ノギノ商店っていうお店に売ってる物を購入すると、アイテムボックスに転送?される仕組み…みたいな?…ごめんなさい、よく分かってないです」
「これはトウヤが居た世界の物ですか…すごいですね」
「ああスゲェな」
アルド居たんだ。
ロワンの声に続いた低い声に、すっかりとアルドの事を忘れていた事を思い出す
アルドは未だにマズイお肉をモリモリと食べている。どれだけ食べるんだ…というかどれだけあるんだその肉
アルドが肉を食べてる今のうちに!と思い立ち、メロンパンの袋を開封し齧り付いた。
うううまーーーー
久々の糖分が染み渡る…至福
パン屋のメロンパンと違って少しベッタリ、パサパサしているがそれでも充分美味しい
やっぱり空腹は最高のスパイスだった…
メロンパンの甘味を堪能していると、隣から熱い視線を感じる、ロワンだ。
さすがに1人で黙々と食べるには気が引けて、食べかけのパンを千切り、ロワンへと問いかける
「…たべる??」
「いいんですか!…では、ありがたく」
キラリとロワンは赤い瞳を光らせ、とても嬉しそうな顔で受け取ると、少し不思議そうに手元のパンを見つめた後、口へと運んだ。
綺麗な唇で一口齧る
ニコニコしてたロワンの口角が更に上がり、頬が薄らと紅潮した
おおう。染み渡ってる、糖分が染み渡ってる!
トロンとした顔でロワンがこちらを向き「おいしいです」と言い、思わず胸の奥がキュンとした。
だってめちゃくちゃ綺麗なんだもの。
「これは何という食べ物なんでしょう?…パンみたいですが、すごく柔らかくて甘い」
「メロンパンっていって、メロンという果物を模したパンだよ!」
「メロン…?その果物もいつか食べてみたいものですね…」
本当に美味しい。長年生きて来たけどこんな美味しい物は初めて。とロワンの頬が一層緩む。
500年も生きたロワンが言うのだから、この世間の食文化はあまり期待出来なさそうだな
出来る事ならメロンも食べさせてあげたい…!どうして売ってないの…ノギノ商店さん!!
もっとロワンに色々食べさせてあげたいな、なんて思いながらメロンパンを頬張るロワンを眺めていると、聞こえて来た低い声
「おい、俺のは」
絶対来ると思ってたよアルド。
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