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一目惚れ④
たぶん俺は孫の顔を、両親に見せてあげられない。
だからそれは妹に任せて、その分しっかり稼いで老後の面倒は見てあげなくちゃなって思う。
そしていつか藍が結婚して、子供を生んだら、めちゃくちゃ可愛がってやるつもりだ。
家に向かう途中さりげなく探りを入れてみた結果、彼は藍と同じ大学の学生で、同じサークルの一年生である事。
そして実家は関西の片田舎で、現在は俺の住むマンションのすぐ近くに、ひとりで住んでいるらしい事などが判明した。
......それとこれはちゃんと確認したワケじゃないけれど、やっぱり藍に片思い中なんだろうなっていう事も。
冷たい雰囲気の彼の瞳が藍を見る時、ほんの少しだけ柔らかく、優しくなる。
彼女と話す時だけクールな表情が崩れて、心から幸せそうに笑う。
初めて藍の事が、妬ましいと思った。
彼女は、女で。
愛してくれるやさしい恋人も、いて。
......なのにこの男にまで、惚れられているのだから。
自分がもし、女だったら。
自分がもし彼と同じ年齢で、彼と同じ大学に通っていたら。
......あるいは自分がもし、藍だったら。
そこまで考えて、心底げんなりした。
だって俺は、男で。
彼よりも四つも年上で、社会人で。
......そしていくら顔の造りが似ていたとしても、彼が好きなのは俺じゃない。
だけど出会ったばかりの彼と、これっきりの関係にしたくなかった。
だから彼の帰り際、当たり前みたいに連絡先の交換を提案した。
翔真は俺がそんな風に考えていただなんて、微塵も思ってはいなかったのだろう。
何の疑問も持つ事なく、笑顔で応じてくれた。
特別何かが起きる事を、望んだワケじゃない。
ただこの男との繋がりを、0にしたくなかった。
......それだけの、はずだった。
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