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プラトニックな関係②
ゲイ向けの出会い系サイトで知り合った男と、寂しさを誤魔化すために一夜限りの関係なんてモノを結んだ事もある。
コイツと出会ってからもそういった行為 の相手は、途切れること無く常にいた。
何の疑いもなく俺を信じ慕ってくれる彼を裏切り、襲わないためにも、切らすワケにはいかない。
『翠 さん、どうかしましたか?』
スマートフォンの、向こう側。
突然無言になってしまった俺の事を、心配そうに気にかけてくれる翔真。
優しさと無防備さに、付け入ってごめん。
......でもやっぱりお前の事、ただの友達としてでも手放したくはない。
だから浅ましく醜い欲望を抑え、今日もまた笑って言うんだ。
「ごめん、ちょっと電波悪かったみたい。
じゃあ仕事終わったら、真っ直ぐ帰るから」
彼と俺の気持ちには、かなり温度差がある。
この想いが彼に届く事は、絶対にない。
だってアイツが好きなのは、妹の藍なのだから。
ハハ......ホント俺、何やってんだろ。
......中学生かよ、糞ダセェ。
タバコを灰皿に押し付け、職場の喫煙ルームでひとり、小さく笑った。
その時ちょうど自動ドアが開き、中に一人の男が入ってきた。
同期で俺のセフレの一人、和希 だ。
「あれ?翠もいま、休憩中?」
にっこりと微笑み、彼が聞いた。
俺はほんの少し居心地の悪さを感じながらも笑顔を返し、答えた。
「うん、でもちょうど戻るとこ。
……会社では下の名前で呼ぶなって、いつも言ってんだろうが」
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