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プラトニックな関係③
なのに彼は距離を詰めて俺の手首を掴み、訴えは無視したまま人好きのする笑みをまた浮かべた。
「えー、戻っちゃうの?
......もう少し、居ろよ」
強く手を引かれ、耳元で甘く囁かれた。
初めて会った時からお互いに、同じ側 の人間だと何となく本能で分かった。
そしてどちらも後腐れ無くヤれればそれで良いやと考えるようなタイプの人間だったから、割とすぐに肉体関係を持った。
しかもその相性がかなり良い方だったものだから、いまだにズルズルとセフレなんていうろくでもない関係が続いている。
「離せよ、他のヤツに見られるかも知れないだろ?」
折角翔真と話せて身も心も浄化されたばかりなのに、何となくコイツにそれを汚されたような気がした。
まぁでもそもそもの話、俺は既に汚れ切った人間だから、今さら何を言っているんだって自分でも思うけれど。
「ここは死角になってるし、大丈夫だよ。
それよりさ、翠......今晩、お前んちに行っていい?」
クスクスと笑いながら俺の指に指を絡め、もう一方の手で咥えたタバコに火を付ける和希。
その様がまた大層絵になるものだから、余計に腹立たしい。
コイツに本気ではまりかけた黒歴史を思い出し、眉間に深いシワが寄るのを感じた。
「今日は、無理。先約ありだから」
にっこりと微笑み、答えた。
すると彼は呆れ顔で俺を見つめ、言った。
「あー......またあの、妹ちゃんの後輩?
まだ続けてたんだ、プラトニックな片思い。
......何が楽しいのかねぇ、そんなの気持ち良くもなんとも無いのに」
馬鹿にしたように意地悪く、彼の口角が上がる。
それを見てますます不快感が増し、彼の手を振り払った。
「思うだけなら、自由だろ?
余計なお世話だっつーの」
それでもわざと冗談っぽく、おどけた雰囲気で答えた。
だけどきっとこの男には、そんな事までバレバレだろう。
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