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プラトニックな関係④

「まぁね。......翠、楽しい夜を」  和希がまた可笑しそうに、クククと笑いながら言った。  でも俺はもう彼に背を向けてしまっていたから、まるで考えてもいなかったんだ。  ......この男がこの時、どんな想いでそう言ったのかだなんて。 ***  昨日わざと多めに作ったカレーを温め直していたら、インターホンが鳴った。 『こんばんは、翔真です。  お言葉に甘えて、また来ちゃいました』    少し低めの、ハスキーな声。  モニター越しに見えた、彼のはにかんだような表情。  こちらの顔は彼には見えていないけれど、緩みきった顔の筋肉を慌てて引き締め、平静を装い言った。 「いらっしゃい、翔真」 「こんばんは、翠さん。  これ......ちょっとですが、どうぞ」  ドアを開けると、彼は律儀にも手土産らしき物が入ったコンビニのビニール袋を俺に向かい差し出した。  そういうところも嫌いじゃないけれど、まだ学生なんだし、そんなに気遣って貰わなくても平気なのに。  クスリと笑って受け取ると、袋の中を覗き込んだ。 「あ、プリンじゃん!  これ確か、CMで流れてるヤツだよね?  一度食べてみたかったんだ、ありがとう」  その言葉に、ほっとしたように綻ぶ彼の表情。  最近は俺に対して見せてくれるようになった、その邪気の無い笑顔に心音がドクンと跳ねた。 「今日はね、チキンカレーにしてみたんだ。  ちょっと辛いかもしれないけれど、大丈夫?」  だからそれを誤魔化すために普段の俺らしい言葉を選んだつもりだったけれど、もしかしたらいつもよりも少しだけ早口になってしまったかも知れない。  ......本当に、格好悪い。

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