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ボーダーライン②

***  温まったから皿にご飯と一緒にカレーを盛り付け、前もって準備していた温泉卵とお手製の福神漬けを添えた。 「やっぱり、今日も美味しい。  翠さんは、良いお嫁さんになれそうですね」  普段は礼儀正しい癖に、時々コイツはしれっとこういうふざけた冗談を、悪戯っ子みたいな顔をして言う。  ......本当に、たちが悪い。  幸せそうに頬張りながら、子供みたいに無邪気に彼は笑った。  そんな仕草を見て、ふとコイツは昨年までは高校生で、制服を着ていたんだもんなと思った。  ......男な上にこれだけ年の差があれば、俺は絶対彼からしてみたら、対象外だよな。 「......お嫁さんって、何だよ。  俺、男だぞ?  こっちが欲しいわ、そんなもん」  本当に欲しいのは、翔真。  ......嫁なんぞじゃなく、お前だけどな。  そんな事は、勿論言える筈もなく。  ......俺はわざとテンション高く、しれっと探りを入れた。 「そう言えばお前、付き合ってる女の子は居ないワケ?  いつも俺の呼び出しに、素直に応じてくれてるけど」 「いまは、居ないですね。  ......想う人は、居ますけど」  困ったように微笑みながら、うつ向き答える翔真。  それを聞き、心臓がギリギリと締め付けられたみたいな気がした。 「へぇ......そうなんだ。  その子と、上手くいくと良いね」  彼の事などなんとも思っていないふりをして、笑顔で答えた。  だってそうやって誤魔化す事が出来るくらい、俺は大人で。  それなりに、出逢いや別れも経験もしていて。  ......そしてそうやって誤魔化してまで、コイツの側に居たかったから。

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