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らしくない③
***
予定通り定時に仕事を終え、ロビーに向かうとそこには、既に和希の姿があった。
嫌味なくらいの長身も、少し癖のある焦げ茶色の髪も、切れ長の瞳も、口元の色あるホクロも。
......その全てが、本当に絵になる男だ。
それが少しムカつくだなんて感じてしまうのは、さすがに理不尽過ぎると自分でも思うけれど。
「ごめん、ちょっと待たせたか?」
腕時計を確認すると、時刻は17時55分。
約束の時間よりは早く着いたものの、少しだけ申し訳ない気分になり言った。
すると和希は小さく横に首を振り、穏やかに微笑んだ。
「俺も、今降りてきたところ。
それにまだ約束の時間にはなってないんだから、謝らなくていいよ」
クスクスと笑うその表情は、何となく猫を思わせる。
自分が甘えたい時にだけすり寄って来る、気紛れで、傲慢で、でも何故か憎めない。
そんな、猫。
本当に、得なヤツだと思う。
だって結局彼の策にはまり、まんまと言われるがまま、ヤり友の関係をズルズルと続けているのだから。
居酒屋で軽く食事を済ませ、いつものように俺の部屋に向かった。
そして中に入ると彼は、荒々しく俺の唇をキスで奪った。
だから俺も彼の首元に腕を回し、夢中で応えた。
舌と舌を絡め合う、ディープなキス。
......コイツ、やっぱり上手い。
ドアにもたれて立ったままグイグイと、彼の膝が俺の股間を刺激する。
そしてそれに反応し、腰が揺れるのを感じた。
「もう、欲しくなった?
......ホント翠は、えろい反応するよな」
唇についた、もうどちらのモノか分からない唾液をペロリと舐め、馬鹿にしたように彼の口角が意地悪く上がる。
それを見て、ゴクリと喉がなった。
普段は穏やかな印象のこの男だけれど、行為の最中、彼はいつもサディスティックな一面を見せる。
暴力を振るう事は決して無いけれど、言葉と体、その両方で俺を辱しめ、弄ぶ。
コイツとの関係に、心なんて必要ない。
......だってほら、もうこんなに気持ちいい。
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