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甘い毒③

 夜中に目を覚ますと、和希は健やかな吐息をたて、俺の隣で眠っていた。  無駄に整ったその寝顔に少しだけ苛立ちながらも、与えられる人肌の温もりは心地よい。  だから俺は再び布団に潜り、コイツの体温を感じながら睡魔に飲まれていった。   ***  その日の、夜の7時過ぎ。  いつもみたいに翔真が、約束の時間の少し前に家に来た。  今夜のメニューは、彼が以前好きだと言っていたハンバーグ。  大人っぽい見た目の割に、食の好みは存外子供みたいだ。  だけどそのギャップすらも可愛いななんて思ってしまう俺はきっと、かなり重症なのだろう。  ふたりで過ごす穏やかで、ちょっぴりドキドキする時間。  会話を楽しみながらの夕飯を終え、彼にも手伝って貰って食器の後片付けをしていた時に、事件は起きた。 「何?どうかした?」  いつになく不躾な翔真の視線に気付いたから、正直なところ実際はかなり動揺していたけれど、何事も無かったみたいな顔をして声を掛けた。    だけど彼の発した言葉により、そんな仮面はあっさり剥がされてしまった。 「翠さん、ここ。  ......キスマーク、付いてますよ」  首筋に突然触れた、彼の冷たい指先。  それにびくんと、体が大きく跳ね上がった。  彼の指差した場所は、首の後ろ、うなじの少し下辺り。  スーツを着ていたらバレないけれど、私服のTシャツに着替えたらギリギリ見える場所。 「嘘だろ!?和希の、野郎......!」  ゲームに負けたのに、昨日は珍しく罰を与えて来なかったなと思ったら、アイツ!  慌てて手のひらで隠したけれど、常とは異なる俺の言葉遣いに驚いたように、翔真は切れ長の瞳を大きく見開いた。

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