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痕①
「和希さんのおかげで、そこまで解さなくても僕のがもう入りそうなくらいですね」
キスマークが残っていたせいで、つい最近アイツに抱かれたばかりだからと暗に指摘された。
そしてそれに反応して、中に埋められた翔真の指をきゅっと締め付けてしまった。
「このタイミングで、締まるとか......。
翠さんって乱暴にされるのだけじゃなく、こういう恥ずかしいのにも興奮する性癖なんですか?」
俺を腰の辺りに座らせたまま上体を起こし、和希がつけた痕に唇を寄せると、翔真はそこに強く吸い付いた。
それに驚き、彼の顔を押し退けて、睨み付けるみたいにして叫んだ。
「お前、何すんだよ!?
キスマークを残されるのは嫌いだって、俺さっき言ったよな?」
だけど彼は楽しそうに笑い、同じ場所に今度は舌を這わせた。
「良いじゃないですか、別に痕の数が増えたワケじゃないんだから。
それに僕も彼もただのセフレなら、同じ真似をしても問題ないですよね?」
これまでコイツの事をずっと、純粋で真面目な男なのだとばかり思っていた。
だけど情事の最中の翔真は、かなり挑発的だしたちが悪い。
想いを寄せてきた相手だったから、誘われて正直嬉しかった。
しかし分かっていた事だけれど自分はやはり遊び相手でしかなく、藍の代わりにすらされてはいないのだと感じた。
「あれは気が付かないうちに、いつの間にかつけられてただけだから。
それにしてもお前、今までずっと猫被ってたの?」
あまりにもムカついたから、俺も彼の首元に口付け、お返しにキスマークをつけてやった。
だけど彼はその痕に満足そうに触れ、クスリと笑った。
「そういうつもりは、無いですけれど。
あぁ......良いですね。
まるで僕が翠さんのモノだっていう、証 が刻まれたみたいで」
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