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食えない男②

 電車を降り、職場に向かい二人並んで歩きながら聞かれた。 「確か相手、まだ未成年だったよな?  ......ソイツと、付き合うの?」  小さな声で、ボソボソと聞かれた。  一応彼なりに周囲を気遣ってくれての事だと思うけれど、何だか少し声にいつもの覇気がないように感じられた。  この男が俺に対して、そんな情みたいなモノを持ち合わせているはずがないのに。  別に嘘を吐くような内容でも無かったし、素直に問いに答えた。 「18歳は越えてるけど、そういうのは無いかな。  好きだとか、付き合って欲しいとかじゃなく、自分もセフレにしてくれって言われただけだし」  それを聞き、彼は小さな溜め息を吐き出した。 「何、それ。......もしかして俺との事、話したの?」  その言葉に苛々が限界を越え、少し強めの口調で言ってしまった。 「......自分から、好き好んで話したワケじゃねぇよ。  お前がこんなところに、勝手にいつの間にか痕をつけてたから......!」  キスマークを付けられた項の辺りを手で押さえながら、和希の事を睨み付けた。  すると彼はあぁ......と合点がいった様子で言うとこめかみの辺りを指で押さえ、軽く舌打ちをした。 「なるほどな。......牽制のつもりが、逆に起爆剤になったか」  舌打ちなんて真似をするのは、いつも飄々としていて何を考えているのか良く分からないコイツらしくない。  ......しかも、牽制って。  怒るのも忘れ、つい吹き出した。 「何言ってんの?俺とお前も、ただのセフレじゃん。  なのにもしかして、嫉妬でもしたのかよ?」     そんなはずはないと分かっていたから、笑いながら聞いた。  だけど彼はにっこりと微笑み、答えた。 「ノーコメント。どう答えても自分に不利になる事は俺、言わない主義だから。  そろそろ会社に着くし、この話はもう終わりな」  本当に、喰えない男だ。  でもそれもコイツの魅力のひとつだと思うから、本当にたちが悪い。

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