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当たり前みたいに④
「夕飯はじゃあ、どっかで食ってから帰る?」
俺の問いに彼は、笑顔で答えた。
「んー......。
出来れば翠の、手料理希望。
久しぶりにお前の作った、肉じゃがが食いたい。......駄目か?」
......やはり今日のコイツは、何処かおかしい気がする。
なんていうか、やたらと甘えられている感じがするのだ。
だけどこのおねだりに関しても特に断る理由も無かったし、どのみち一人で食うとしても自炊はする予定だった。
だから少しだけ違和感を感じながらも、答えた。
「いや、別に駄目じゃねぇけど......」
すると彼はまたしても嬉しそうに、邪気のない笑みを浮かべた。
「ありがと、翠。
久しぶりに翠の作ってくれる飯、スゲェ楽しみ!」
本当に、調子が狂う。
以前の俺ならばきっとこんなやり取りも、ただただ純粋に喜んだと思うけれど。
ちょうど会社の入り口辺りで、同期の一人に声を掛けられた。
「あれ......二人で、飯食いに行ってたの?
お前らホント、仲良いよなぁ」
俺らがただの同僚だと思っているであろう男は、何の疑いも持ってはいない様子で、ちょっと拗ねたような口調で言った。
すると和希は俺の体に軽く抱き付き、フフンと笑って言ったのだ。
「うん、俺ら仲良しだから。
なぁ?翠」
「はぁ!?俺とお前が、仲良しとか......。
マジで、キモいんだけど」
あまりにも堂々と、し過ぎているせいだろう。
俺達の関係を微塵も疑うこと無く、彼は言った。
「ハハハ。あんまりしつこくして、嫌われないようにな。
あとさぁ......今度は俺も、誘えよ!」
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