34 / 90

当たり前みたいに④

「夕飯はじゃあ、どっかで食ってから帰る?」  俺の問いに彼は、笑顔で答えた。 「んー......。  出来れば翠の、手料理希望。  久しぶりにお前の作った、肉じゃがが食いたい。......駄目か?」  ......やはり今日のコイツは、何処かおかしい気がする。  なんていうか、やたらと甘えられている感じがするのだ。  だけどこのおねだりに関しても特に断る理由も無かったし、どのみち一人で食うとしても自炊はする予定だった。  だから少しだけ違和感を感じながらも、答えた。 「いや、別に駄目じゃねぇけど......」  すると彼はまたしても嬉しそうに、邪気のない笑みを浮かべた。 「ありがと、翠。  久しぶりに翠の作ってくれる飯、スゲェ楽しみ!」  本当に、調子が狂う。  以前の俺ならばきっとこんなやり取りも、ただただ純粋に喜んだと思うけれど。  ちょうど会社の入り口辺りで、同期の一人に声を掛けられた。 「あれ......二人で、飯食いに行ってたの?  お前らホント、仲良いよなぁ」  俺らがただの同僚だと思っているであろう男は、何の疑いも持ってはいない様子で、ちょっと拗ねたような口調で言った。  すると和希は俺の体に軽く抱き付き、フフンと笑って言ったのだ。 「うん、俺ら仲良しだから。  なぁ?翠」 「はぁ!?俺とお前が、仲良しとか......。  マジで、キモいんだけど」  あまりにも堂々と、し過ぎているせいだろう。  俺達の関係を微塵も疑うこと無く、彼は言った。 「ハハハ。あんまりしつこくして、嫌われないようにな。  あとさぁ......今度は俺も、誘えよ!」

ともだちにシェアしよう!