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体が求めるモノ①
「やっぱり翠の作る肉じゃが、めっちゃ旨い。
マジで俺の、嫁さんになってくれない?」
テーブルを挟んで向き合って座り、俺の手料理を前に彼は屈託の無い笑みを浮かべて言った。
だけどその言葉に呆れ、フンと鼻で嗤って答えた。
「お前もそんな事、言うのかよ。
日本の法律上認められてねぇし、そもそもの話、お前の嫁とか絶対嫌だね」
すると和希は眉間に深いシワを寄せ、じっと俺の顔を見つめた。
いつもと同じ軽口だったはずなのに、何でそんなに険しい表情をする理由があるというのか?
意味が分からず、俺もただ彼の顔を凝視した。
「本当に翠は、俺を煽るのが上手だな。
......でもお前の事、いまさらアイツに譲る気ないから」
俺の言葉の後半部分に気を悪くしたのかと思いきや、まさかの前半だったとは。
でもそれだとまるで、嫉妬しているみたいに聞こえる。
コイツは俺に対してそんな感情なんか、一切持ち合わせていないはずなのに。
「は?何言ってんの、お前。
譲るも何も、俺は和希の所有物じゃねぇし」
いまさらなんていうのは、こっちの台詞だ。
好きだって思っていた時期もあったけれど、俺の気持ちを散々踏みにじっておいて。
なのになんで今になって、そんな独占欲を滲ませるような発言が出来るワケ?
そう。......俺とお前の関係は、ただの同僚でセフレなのに。
それらの感情がきっと、駄々漏れになってしまったのだろう。
和希は意地悪く口元を歪め、言った。
「何をそんなに、苛立ってんの?
本当に翠は、感情を隠すのが下手だな」
そこでようやく、またしてもコイツのペースに完全に乗せられてしまっていた事に気付かされた。
「和希と違って俺は嘘吐きじゃねぇし、隠さなきゃならない感情なんてお前に対して持ち合わせていないからな」
睨み付け、答えた。
すると彼はクスリと笑い、いつもみたいに軽い調子で言った。
「ハハ、確かに。
とりあえず、飯食おうぜ。
せっかく翠が作ってくれたのに、冷めちゃうから」
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