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体が求めるモノ②

 最悪な雰囲気の中、少し遅めの夕飯を終えた。 「そんなに、怒るほどのこと?  いい加減、機嫌直せよ」  ガタンと音を立てて椅子から立ち上がり、俺の顎にテーブル越しに手を掛けた。   「別に機嫌悪くなんか、ねぇけど?」  ニヤリと片方の口角を上げて答えると、彼はやれやれとでも言いたげに溜め息を吐き、キスを落とした。 「ホント可愛いな、翠は」    俺から唇を離すと、和希はにんまりと笑った。  それにまたいらっとしたものの、こんな安っぽい挑発に乗るのは嫌だったから、今度は普通に笑って答えた。 「そいつは、どうも。  和希はぜんっぜん、可愛くないけどな」  クククと肩を揺らして笑う、和希。  それにドキリとさせられたけれど、言い訳みたいに心の中でその理由を顔が好みなせいだからに違いないと、無理矢理結論付けた。  彼のこういった表情はやはり、なんとなく猫っぽいなって思う。  プライドが高くて、傲慢で......自分の気分次第で甘えてくる癖に、俺が求めるとスルリと逃げて行ってしまう、そんなところまでそっくりだ。  ......忌々しいのにその温もりを失いたくなくて、いまだに手離す事が出来ない。 ***  洗い物を、手伝って貰いながら。  昨日は和希じゃなく、翔真が隣に立っていたんだよなと思うと、なんとなく不思議な気分になった。  好きだった男と、現在進行形で好きな男。  そのどちらともこんな風に、同じ部屋で連続して関係を持つとか。  ......俺ってホント、モラルも貞操も無さ過ぎだろ。 「風呂の湯、張って良い?  久しぶりに、一緒に入ろうぜ」 「別に、良いけど。  でもあんま、しつこくすんなよ。  逆上せると、後がダルいから」  俺の言葉に満足げに頷き、和希は了解とだけ答えた。  そして風呂が沸くまでの間、直接的なことはされなかったけれど、二人掛けのソファーに腰を下ろし、キスや太ももへの軽い愛撫で、全身の熱を高められていった。

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