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体が求めるモノ⑥

 彼の声のトーンが、少し下がった気がした。  これはきっと、俺にとってはまずい兆候だろう。  だってこういう時の和希は大抵、いつもより更にサディスティックになる。  だからたぶん俺は明日、またしても寝不足のまま仕事をする羽目になるだろう。  迷惑なはずなのに、乱暴に犯されまくるであろう少し先の自分を想像し、ゾクゾクして体が震えた。 「ここで、締め付けて来るとか......。  本当にお前は、どうしようもないドMだな」  ククッと笑いながら、また同じ場所にキスマークを付けられた。  しかも今回はひとつではなく、少しずらした所に複数個。  まるでコイツの所有物みたいに痕を付けられるのはあまり好きじゃないけれど、抵抗したらきっともっと酷い目に遭わされると思ったから、大人しくしておいた。 「良かったな?翠。  これでまたソイツにも、苛めて貰えるよ?」  指でその痕をなぞりながら、楽しそうに笑う和希。  本当に、性格の悪い男だと思う。  俺が翔真の事を好きなのだと知った上で、こんな嫌がらせをしてくるのだから。  だけど何を言ってもたぶん無駄だし、火に油を注ぐだけだと思ったから、やはり何も言わずされるがままにしておいた。    浴室だから、いつもより声が響く。  そして声だけでなく、彼にパンパンと激しく突かれる音も、ぐちゅぐちゅという卑猥な水音も。 「和希......そこ、もっと......」  またしても欲に溺れ、彼に必死に訴えた。  和希が恍惚とした表情で、鏡越しに笑っているのが見える。  ......気持ち良さそうに喘ぐ、獣みたいな俺の姿も。 「翠、一回逝っとこうか?  勿論これで、終わりじゃないけど......な!」  更に激しさを増す、ピストン。  前に手をつかされている上、腰をがっつりホールドされているため、前にも後ろにも逃れる事が出来ない。  それを言い訳にしてそのまま俺は馬鹿みたいに悲鳴にも近い声を上げながら、強制的に絶頂へと導かれた。

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