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穏やかな日曜日②

「......お前、そんな表情もするんだな」  笑いながらボソリと言うと、彼は少し驚いた様子で瞳を見開いた。  それからまたちょっとだけ困ったように笑い、思わぬ言葉を口にした。 「翠さんは僕の事、一体どういう人間だと思っているんですか?」  どういう、人間......か。  初対面の時は、年齢の割に落ち着いた、大人っぽいヤツだなと思った。  しかし付き合っていく内に、時折彼が見せる、年相応な笑顔と言動とのギャップに心惹かれるようになった。  そして、体の関係を持ってからは。  ......行為の最中はドSな癖に、やっぱり優しい男なんだって知った。 「うーん......なんていうか、若年寄って感じ?」  その言葉に、彼の眉間に深いシワが刻まれた。  最初の頃は気付かなかったけれど、コイツ、感情を隠すの下手過ぎる。 「若年寄って......ちょっと、酷く無いですか?」  ツンと尖らされた、唇。  あまりにもそれが可愛かったから、笑いながら席を立ち、テーブル越しにキスをしたのだけれど、完全に拗ねてしまったのか彼はプイと顔を背けた。  ......こんな顔、やっぱり出逢った頃には見せてくれなかったよな。  だからそれだけ俺に翔真は、心を許してくれたという事なのだろう。 「おーい、何をいじけてんだよ?  ったく......子供かよ」 「どうせ僕は、子供ですよ。  お酒も煙草も、まだNGですしね」   たぶん以前の俺だったら、こんな風にセフレに拗ねられたらきっと、面倒だと感じていたに違いない。  だけど今は、それだけ翔真に気を許して貰えている気がして嬉しい。 「拗ねんなよ、翔真。悪かったってば!」  今度は彼の頭にそっと手を伸ばし、ワシワシと撫でた。  すると彼はますます唇を尖らせ、俺の手首を掴むと、指先に軽く噛み付いた。

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